Humiliation or Holocaust (恥辱か大虐殺か)

2012.09.25発行 Vol.183
 物騒なタイトルで申し訳ありません。この言葉は、今から35年以上前、私の大学時代に国際政治学の高坂正堯教授の外書購読の授業で出てきた言葉です。Foreign Affairsという外交の雑誌を教材にしての授業でしたが、教科書もなくし、内容もほとんど忘れてしまいましたが、この言葉だけはなぜか今でも脳裏に残っています。尖閣諸島の領有権の問題に関し、中国でのデモが一応収まりましたが、私は、今回、この問題に関し、この言葉を何度か思い浮かべました。

 もちろん、尖閣諸島は日本の領土であることは間違いがありません。そして、現在は日本国が実効支配をしています。それを石原東京都知事が都で買い上げると言いだし、それに対し政府は国有化を打ち出しました。そのこと自体は、国土を守るという観点から出た行為だとは思いますが、中国政府を過度に刺激してしまったことは間違いありません。

 皆さんが法律的に問題なく所有しているものを、第三者もその所有を主張してきたときに、わざわざそれを見せびらかす行為をするでしょうか。今回はそれをしてしまったのだと思います。

 一方、竹島に関しては、こちらも法的に日本の領土であることは疑いの余地もありませんが、韓国が不法に占拠した状態が続いています。そこに韓国の大統領が乗り込んできたので、日本人の感情を逆なでしました。これも、自分が占有しているものを誇示したので、その所有権を主張している人の感情を逆なでしたとも言えるでしょう。

 話を中国に戻します。中国では8月15日前後には、毎年反日姿勢を強め、国内の「ガス抜き」をしようとします。今年は、「香港」の「市民団体」が尖閣上陸を企てるのをうまく利用して、ガス抜きをしようとしました。中国本土の政府色の強い人たちを使わなかったのは、中国の指導部交代もあり、日本国政府と真正面からぶつかるのを避けたとも考えられます。

 それに対し、日本はその直後に尖閣国有化を打ち出したため、中国政府も「本格的に」対抗措置を講じざるを得なくなりました。中国政府の扇動なのか、市民の自発的な抗議行動なのかは分かりませんが、デモが過激化、先鋭化しました。19日過ぎには一気にデモが鎮静化したことを考えれば、おそらく政府のある種のコントロールがあったと考えるのが妥当でしょう。

 今回は中国政府がデモをコントロールできましたが、もし、デモを抑え込めなくなったら、中国の最大の政策目的は共産党一党独裁体制の維持ですから、権力者が自分たちの権力を保全するために尖閣諸島を一気に自国領土とする行動をとることも考えられます。自民党の総裁選に出馬している人の中には、灯台や船溜まりを建設すると言っている人がいますが、中国の民衆がそのことに抗議し再度大規模なデモを行えば、中国政府は尖閣諸島に向かって艦砲射撃や空爆を行う可能性は否定できません。その際、日本は憲法第九条の規定、つまり「国際紛争を解決する手段としての武力行使の放棄」と「国の交戦権の放棄」により、おそらく何もできないでしょう。米軍の行動を待つしかありませんが、米軍が動くかは不明です。第3次世界大戦の引き金をも引きかねないからです。

 中国の今年度の防衛費は約8兆円です。日本の4兆7千億円を大きく上回っています。近く空母も就航する予定です。日本は交戦もできない上に、軍事的にも勝ち目は薄いと考えられます。そうなれば、この文章のタイトルの「恥辱か大虐殺か」の選択を迫られることにもなりかねません。領土問題が話し合いで平和的に解決されることはまれで、戦争を引き起こしかねない問題です。中国としては南沙諸島のこともあり、尖閣も引き下がることは考えられません。

 政治家の相手の状況や実力を十分に考えない軽率な行動が、「恥辱か大虐殺」を生みかねないことには注意が必要です。まずは韓国を相手にすべきです。政府が為替市場に介入し、韓国ウォンを買い上げてウォン高にすればよいのです。液晶、家電、半導体、自動車などの日本企業が助かる上に、韓国経済は行き詰まります。韓国は、100万人を超える陸上勢力をもつ北朝鮮と対峙している状況で、日本とはまともにぶつかる実力はありません。

 いずれにしても、日本も長期低迷する経済力を上げ、国防能力を高める必要があると考えます。そのためにも、防衛産業を育成するのは、経済と防衛の双方に大きなメリットがあるのではないでしょうか。