AIは人を幸せにするか

2016.05.24発行 Vol.271
 皆さんも最近、AI(人工知能)についての話題が多くなっていることにお気づきではないでしょうか。囲碁の世界チャンピオンにAIが勝ったり、AIを駆使して自動運転車が開発されたりしているからです。これ以外にも、医療や法律分野など多くの分野でAIの活用が期待されています。AIやコンピュータが今後ますます発達することは間違いなく、それにより私たちの生活はますます便利になるでしょうが、懸念がないわけではありません。

 AIとこれまでのコンピュータの違いは、もうすでにご存知かもしれませんが、AIは自分で論理(アルゴリズム)を考えることができるのです。従来のコンピュータでは、決められた論理をコンピュータに覚えこませ、その論理通りにしかコンピュータは動きませんでした。例えば、人間とゴリラをコンピュータに区別させようとすると、顔のつくりや特徴の違いなどをまず論理としてコンピュータに教え、それに従ってコンピュータは判断したのです。

 しかし、AIの場合、人間とゴリラの写真を多く見せると、コンピュータがその違いを自分で論理立て、自身でその見分け方のアルゴリズムを作り出すわけです。人間が学習するのと同じ要領で、AIが学ぶのです。まさに「人工知能」と言われるゆえんです。

 先日の囲碁のチャンピオンとの対戦でも人々を驚かせたのは、これまでにはなかったような手をAIが自分で考え出して打ったことです。従来のコンピュータではありえなかったことです。このような技術を進歩させれば、自動運転車も十分に実用化されます。実際、自動車各社は2020年までに自動運転車を発表するとしています。トヨタとホンダは高速道路で、日産は一般の公道も含めた自動運転車を発表する予定です。また、DeNAはベンチャーと組んで、東京オリンピックの会場間や空港を結ぶ自動運転タクシーを開発する予定で、特区の働きかけを行政にしていると言います。

 しかし、AIは良いことばかりかどうかは分かりません。先ほどの囲碁の対戦では、4勝1敗でAIが勝ちましたが、敗れた対戦ではとても下手な手を打ち続け、完敗したそうです。論理的にはあり得ない手を打ち続けたとのことで、ある意味AIが「暴走」したのです。こういうAIの暴走が医療分野や自動運転車で起こったらと思うとぞっとします。もちろん、AIの暴走を防ぐ手立ても考えようとしており、ひとつは人間の感情を持ったAIの開発も進められています。

 もう一つの懸念は、AIが人間の仕事を奪う可能性が高いことです。まずは自動運転などAIが最初に活用される分野から起こるでしょうが、理論的にはほとんどの仕事でAIがとって変わることができます。とくに単純労働などがAIやそれを組み込んだロボットにとって代わられれば、所得の二極化がますます進むと考えられます。AIやロボットの供給はほぼ無制限に起こるでしょうから、二極化のみならず、これまでの生活様式が大きく変わらざるを得ないことも間違いないでしょう。便利になる反面、仕事や日常生活などが大きく変わるのです。

 AIやロボットの進化はこれからもますます進むことは間違いありません。それを人間の幸せのためにどう使えるのか。原子力と同じ問題をはらんでいると私は考えています。

【小宮 一慶】