2015年を振り返る…2016年は世界経済の転換点かもしれない

2015.12.22発行 Vol.261
 今年も残すところ10日となりました。皆さんにとっても多くのことがあった年だと思いますが、日本の政治や経済にもとても印象的なことがありました。

 政治的には、2014年12月の総選挙で安定多数を獲得した安倍政権が、一気に集団的自衛権を含む安保法を成立させ、憲法問題もからんで夏ごろには大きな議論を巻き起こしましたが、気温が低くなるにつれて、議論も下火になっています。経済的には、企業の不正問題がクローズアップされたこととともに、何といっても中国人による「爆買い」が大きな話題になりました。2月の春節の頃だけでなく、3月以降も中国人観光客の増加は続き、ミルク、おむつに始まり、化粧品、家電製品など多くのものが爆買いの対象となりました。これは日本製品の品質の高さとともに、円‐元レートが以前に比べかなり円安に振れており、それが内外価格差を生んでいることが大きな要因だと私は考えています。物によっては2倍くらいの価格差がありますから、爆買いで買ったものを中国で転売すれば、利益を得られるというわけです。

 LCCで関西空港に来た乗客の中には、荷物の超過料金を避けるために、買った品物の段ボール箱を空港で捨てていく人も多いらしく、関空ではそのために清掃要員を増加させたと聞きます。また、海外からの旅行客が増加したため、東京、大阪などの地域ではホテル料金が高騰し、私を含めて出張旅費が嵩むということが起きています。アパホテルで2万円という話も聞きました。

 一方、爆買いの恩恵を受けている企業も少なくなく、一部の百貨店、ドラッグストア、家電量販店では売上げが上がり、関連するメーカーにも恩恵があります。都心のマンションでも、「2020年までは価格が上昇する」との思惑から、中国人が投資目的で買っているところも多く、マンションによっては売出し戸数の半分を中国人が買っていると言われ、これもあってマンション価格が高止まりしています。

 また、今月半ばに、米国のFRBがサブプライム危機前以来、実に9年ぶりに政策金利を上昇させました。これにより新興国から資金が吸い上げられるのではないかとの懸念が生じ、また、資源価格の下落もあり、多くの新興国経済が動揺しています。さらには、中国経済の減速も鮮明になりつつあり、2015年の成長目標7%にも黄信号が灯っています。従来は、欧米、日本の金融緩和と中国経済の拡大が、世界経済の成長を支えてきましたが、米国の金融引き締めへの転換、中国経済の減速という、言わば世界経済の転換点が、後になって振り返ると、2015年後半から2016年だったということになる可能性もあり、もうすぐやってくる2016年はこれまでとは違う状況になるかもしれません。

 外国人観光客の爆買いや投資が現状の日本経済を支えていることは間違いありませんが、それだけに頼るのはとても危ういと感じます。規制緩和や選択と集中などの本物の成長戦略により、この国の経済を伸ばしていくことを考えなければなりません。企業もしっかりした理念を持ち、差別化された製品やサービスを提供するところだけが生き残れるでしょう。2016年の経済は、米金利上げの影響などにより、先行きがとても読みにくいと考えますが、私たち企業人は、あくまでも経営の本質を忘れずに進んでいきたいものです。

 今年も一年大変お世話になりました。2016年が皆さんにとって素晴らしい年となることを心よりお祈りしています。

【小宮 一慶】