104年に2度目のショックが来ないことを祈るのみ

2012.06.12発行 Vol.176
 6月17日にギリシャ議会の再選挙が行われますが、その行方に世界中が注目しています。選挙の結果次第では、ギリシャがユーロ圏から離脱することもありうるからです。

 ギリシャがユーロ圏から離脱する(=通貨ユーロを使わなくなる)と、新しいギリシャの通貨はかなり高い確率で大きく下落しますから、ユーロ建てのギリシャ国債やギリシャ企業、家計の負債は返済がかなり難しくなります。その結果、ギリシャ国債を保有する民間セクターのみならず周辺国の中央銀行や、企業や家計に貸し出しを行った銀行などが一気に危機に直面します。スペインも失業率が24%という厳しい状況で、ギリシャの動向次第では、ポルトガルやイタリアもすぐに危機に陥る可能性があります。リーマンショックの再来です。「100年に一度」と言われた危機が、「104年に二度」やってくることにもなりかねません。そして、そのショックは前回より大きい可能性があります。

 そうした中、私たちが注意しなければならないのは、リーマンショックの前には、欧州、米国、中国、そして日本も少し経済的余力を持っていたのに対し、今はその余力がほとんど、またはまったくないということです。リーマンショック前(正確には2007年8月のパリバショック前)までは、世界の主要国は、新興国も含め比較的長期の景気拡大を続けていたのです。そして、ショックに対応する余力があったのです。

 たとえば、世界最大の経済大国米国では、リーマンショック前には、景気拡大もあり政策金利は5%を超えていました。失業率も5%以下という状況でした。そして、リーマンショック時には7800億ドル(当時のレートで約80兆円)の財政政策を実行し、金利も5%超からほぼ0%まで低下させることで何とか危機をしのいだのです。欧州各国も財政支出を拡大し、ショックに対応しましたが、それが現在の財政、金融危機を生んだことになります。中国は4兆元(同、約55兆円)の財政支出を行い成長を維持しました。日本もわずか0.5%しかなかった政策金利を引き下げることと、量的緩和で前回の危機に対応したのです。

 しかし、今回は各国ともに余力がありません。危機の真っただ中の欧州は言うに及ばず、米国も昨年、財政赤字問題で議会ともめた挙句、米国債の格下げが起こりました。金利も実質ゼロ金利です。日本もゼロ金利で、量的緩和も限界に来ています。震災対応で財政はさらに悪化しています。頼みの中国経済も減速が鮮明になっています。各国ともに余力がほとんどないのです。

 もしここで次のショックが来たら、各国政府はリーマンショック時のような対応策を出すことは難しい状況です。よしんば有効な対応策を出したとしても、財政赤字を膨らませますから、危機の先延ばしに過ぎず、次の大ショックをもたらす危険性も高まります。

 スペインに対しては10兆円ほどの資金をユーロ圏内で融通し、銀行救済に動くと伝えられていますが、先にも述べたようにギリシャの選挙結果次第では、状況が大きく悪い方向へ動くことも考えられます。さらには、財政緊縮に他国の国民も反発を強めており、根本的解決策を見いだせないまま、この状況が長期化する可能性もあります。来年にはイタリアの総選挙も控えています。資金的余裕が小さい日本企業は、保険と思って手元流動性を普段より厚くしておいたほうが良いと思います。

 いずれにしても、金融情勢は緊張状態が続いていますが、国内では22日の国会会期末をにらんでの消費税政局に焦点が移りがちです。日本も中長期的な問題を多く抱えており、短期的な政争に明け暮れている暇はないはずです。