領土問題は存在しない?

2010.09.28発行 Vol.135
 中国の「漁船」と言われる船舶が日本の海上保安庁の巡視船と衝突した事件について、日中関係がぎくしゃくしています。日本が「検察の判断」として漁船の船長を釈放したことで問題が解決するかに見えましたが、中国は強硬姿勢や威嚇の態度を変えず、日本国内でも自民党だけでなく、民主党内でも菅内閣の弱腰というよりは、検察にすべてを判断させたかに見せている茶番劇に批判が高まっています。菅内閣の存立の基盤を揺るがしかねない大きな問題となる可能性も持っています。

  言うまでもなく、尖閣諸島は明治時代から日本が領有権を持っており、日本の領土であることは間違いありません。それを中国が領有権を主張するのは日本国としては許せることではありません。尖閣諸島には天然ガスなどの資源が存在する可能性があり、中国は無理押ししてでも領有権を主張しているのです。中国は13億人という日本の10倍の人口を抱える現状、資源を確保する必要があります。 しかし、問題の本質はそれだけではないのです。現状の中国を理解する最大のキーは「共産党一党独裁体制を守る」ということです。政権基盤が盤石ではないのです。
  今回の問題は中国の国内向けのアピールであることは多くの方は認識しているでしょう。中国は56からなる多民族国家で、近年のチベットや新疆ウイグル族自治区での暴動などのような大きなものから、各地の小さなものまで暴動が頻発していると言われています。それを抑えるための、ある意味の中国国内のガス抜きには領土問題はうってつけです。ましてや相手は日本ですから叩きやすいわけです。ですから、中国政府の日本に対する抗議の発言は結構過激なものですが、一方、国内でのデモなどはかなり規制しているようです。デモが過激化して、民族暴動にでも発展したら、それこそ逆効果になるからです。

  この問題で「得」をしたのはおそらく米国でしょう。日本人にも中国のある種の「怖さ」が見えたため、日米同盟の重要さが改めて認識されたことにより沖縄での基地運営もやりやすくなるでしょう。さらには、米議会などが中国に人民元の切り上げを強硬に求めていますが、中国としても、日本とこういう状況で米国とあまり事を構えたくないという思惑が働き、人民元問題では中国がある程度の「妥協」を強いられることも考えられます。
  こうした米国の状況を考えると、米国は今回の問題に対して、中国に恩を着せる意味からも、あまり強硬姿勢には出ないと考えられます。米国の中国での経済的な利害関係を考えても、米国にあまり期待はできないと考えるべきです。 今回の問題で、日本政府のスタンスは「領土問題は存在しない」というものですが、「領土は日本のもの」というものと同一視すべきではありません。領土は日本のものであることは先にも述べたように間違いないですが、これだけ両国でもめているのですから、領土問題は「存在する」のです。これまでの多くの戦争も領土が問題となった場合が少なくありません。問題が存在するという認識のもとで、解決策を見つけ出そうとするべきではないでしょうか。お互い問題がないと主張するのなら解決策も見つかりません。経営コンサルタントして企業を多く見ていますが、問題を正確に認識することが解決の大前提です。

  こんなことを続けていれば、そのうち国内問題についても政権は「困っている人は存在しない」などとでも言いださなければ良いと思いますが、いかがでしょうか。