震災後の日本経済と復活のシナリオ

2011.04.12発行 Vol.148
 3月11日に東日本を襲った大震災はそれまで弱いながらも回復基調にあった日本経済の回復シナリオを大きく崩してしまいました。このメルマガでは、震災後の日本経済の状況とその回復のシナリオを探ってみます。

 2010年10-12月期のGDPは名目、実質ともにマイナスでした。これは、その前の7-9月期が猛暑やエコカー補助金切れ前の駆け込み需要などで実力以上に持ち上げられていたこともあります。一方、鉱工業生産指数を見ると、昨年6月以降5カ月連続でマイナスだったものが、その後はプラスに転じ、11年2月には昨年5月の水準を上回るところまできていました。そのままの状況が続けば、資源高などの懸念はあるものの、米国経済の底堅さなどから春先以降、ある程度堅調に日本経済は回復過程に入ると私は考えていました。

 そこに震災が襲いました。3月の数字が少しずつ出始めていますが、自動車は前年同月比で35%の落ち込み、一部の百貨店も大きく落ち込んでいます。東北や北関東では製造設備が大きなダメージを受けたところも少なくなく、また、夏場前からは再び停電の懸念があります。それに加え、自粛ムードも広がっています。企業では宴会やイベント、社内旅行、贈答などが控えられています。原発問題も不気味です。

 こういった状況ですから4―6月期のGDPはある程度大きな落ち込みは避けられません。震災後に再集計された日銀短観の先行き調査でも、大企業、中堅企業、中小企業ともに、先行きの見通しは、震災前よりも厳しくなっています。

 しかし、7―9月は電力供給にかかっている部分もありますが、生産も徐々に回復し、東北地方での復興が進むことから建設、土木関係の復興需要を見込むことができますので、わずかでしょうが回復の兆しがみられると予想しています。

 おそらく日本経済の本格回復が確認できるようになるのは10-12月期からだと考えられます。米国経済の回復と中国をはじめとする新興国経済の復調が日本経済を下支えし始めると思います。

 米国では、個人所得が昨年後半以降過去最高を更新しています。雇用回復のペースはそれほど速くはありませんが、それでも徐々にですが回復をしています。3月の非農業部門の雇用増加も21万人強と悪い数字ではありませんでした。住宅は低迷したままですが、自動車は少し回復の兆しが見えています。米国GDPは昨年よりも回復スピードが上がることが予想されます。

 それにともない米国の中央銀行であるFRBも、現状の量的緩和策や実質ゼロ金利政策からの「出口戦略」を模索し始め、短期金利上昇期待が市場で醸成されていくものと考えられます。そうすると、日本では当分は金利上昇は不可能でしょうから、金利差拡大予想から米ドルが買われ、円安方向に触れ日本経済を大きく下支えすることとなります。

 また、中国をはじめとする新興国の景気拡大も日本からの輸出や現地生産の増加で日本経済にも良い影響を与えると考えられます。

 もちろん、懸念材料も残念ながら少なくはありません。ひとつは資源高です。新興国や米国経済の拡大、円安は資源価格の高騰をもたらす可能性があります。

 さらには財政悪化懸念があります。被災地の復興を最優先することは言うまでもありませんが、最低でも5兆円以上の膨大な予算が必要なことは言うまでもありません。先進国最悪となっている財政事情を考えれば、赤字国債の増発は国債の格下げをもたらす可能性が大きいと言えます。格下げは金利上昇をもたらします。私は当面は短期国債で復興資金をまかなうものの、早ければ来年度以降の消費税上げを政府は宣言し、今年度に消費を先食いするとともに、来年度以降の財源の確保と財政再建への姿勢を明確にするのが良いのではないかと考えています。

 原発の問題も長期戦の様相ですが、秋以降の景気回復に期待したいところです。