開業率より廃業率を高める

2014.06.10発行 Vol.224
 この6月中に、アベノミクスの「三本目の矢」の「成長戦略」が発表される予定です。昨年6月にも発表されましたが、首相の発表時に日経平均が大きく値を下げ、安倍内閣は市場から厳しい評価を得るような内容でした。その後、昨年9月に再度発表されると報道されましたが、その時期に東京オリンピックが決定し、なぜかオリンピックを「第四の矢」などと評価する人まで出て、成長戦略の発表はうやむやにされました。

  第一の矢である日銀の「異次元緩和」の効果も、銀行の貸出し増加率などを見ていると息切れしはじめている中、今度こそ「本物の」成長戦略が発表されることを期待しています。

 そんな中で、日本は起業が少ないので、開業を増やすのが成長に必要だという意見があります。私もその意見に賛成です。そこで政府は「開業率(企業数の中での新規開業の割合)」を高めるという施策を打とうとしています。開業資金を借りやすくしたり、開業から数年間の税金を優遇すると言ったものです。

  日本の開業率はこのところ4%程度で、欧米の10%程度の半分以下の数字です。これを上げようとの試みが行われるのですが、実は「廃業率」も日本は同様に低く、欧米の半分程度です。私は、廃業率が上がれば自然に開業率が上がるのではないかと思っています。

  なぜ、廃業率が低いのかと言えば、さまざまな理由があると思いますが、潰れるべき企業が潰れないことにも問題があると思います。規制や過度な保護で生き延びている企業です。日本の企業の70%以上が法人税を支払っていないという現実がありますが、課税所得(税金が課せられるベースとなる所得)が赤字だからです。それでも生き延びられるのは、なんとか資金繰りがついているからです。本来なら、社会への「参加料」も支払っていない企業は、社会への貢献度も低く、ヒト・モノ・カネなどの資源も有効に活用されていないのですが、それらの企業が淘汰されない仕組みが出来上がっているのです。いわば、企業は「社会の公器」であり、資源が最大限に活用されて、社会に恩恵をもたらすものでなければなりませんが、それができていないのです。
 
  法人税率引き下げの議論がなされており、私もそれに賛成ですが、その際に「外形標準課税」をさらに強化すべきだと考えます。外形標準課税とは、売上高や付加価値に対して課税するものです。(私は売上高より付加価値額に対して課税するほうが合理的だと考えています。)

  また、開業に際して政府が手助けすることはやぶさかではありませんが、あまり「甘え」を与えると結局うまくいかず、本来廃業すべき企業の延命とともに国民負担を増やしていることにもなりかねません。

  これまで何度かお話したように、現状、わが国の名目GDPは90年代初頭と同じです。20数年間成長してこなかった日本経済を、再度成長軌道に乗せることは容易なことではありません。ましてや、高齢化が世界に類を見ない速度で進み、そのこともあって対GDP比では先進国中最悪の財政赤字を抱えている中で成長を行わなければならないのです。逆に言えば、成長しなければ、福祉の問題も財政の問題も解決の糸口がつかめないのですが、今度こそ付け焼刃でない、厳しさと将来の希望を合わせ持った「本物の」成長戦略が出ることを心より期待しています。