資源高が心配の日本経済

2011.03.08発行 Vol.146
 新興国の成長で高めに推移していた原油価格が、中東の動乱で一気に1バレル100ドルを超す状況となりました。日本経済への懸念材料となっています。今回のメルマガでは、現状の景気指標を分析しながら今後の日本経済の状況を分析します。(もし、月曜日の日経新聞の「景気指標」がお手元にあるのなら、それを一緒にご覧になると良いと思います。)

 2010年10―12月のGDPは名目、実質ともにマイナスを記録しました。その前の7―9月期が猛暑、エコカー補助金切れやタバコ値上げ前の駆け込み需要があり、その反動で下落したところもあります。実際、「消費支出(2人以上世帯)」を見ると11月、12月は前年比でマイナスとなっています。日本の場合、GDPの55%強は家計の支出が支えていますから、この「消費支出」の動向はGDPを大きく左右します。

 エコカー補助金切れ直前までは前年を大きく超えていた新車販売台数は、10月と11月は前年比で30%超の大幅な落ち込みとなりました。2011年1月はマイナス16.7%とマイナス幅は小さくなっていますが前年割れが続いています。

 このことに関連して少し懸念があるのは住宅です。住宅は、住宅取得の贈与税枠の拡大、住宅エコポイント、住宅ローン減税などにより、水準は低いもののこのところ底堅い動きをしてきました。しかし、これらの政策効果が切れる今年3月以降は、自動車と同じ動きをするのかが注目されるところです。

 企業業績は順調に回復しています。海外での業績好調組にけん引されています。08年度は営業利益が前年比でマイナス40%強と大幅な落ち込みを見せ、翌09年度もさらに落ち込むという状況でしたが、この3月に決算を迎える10年度は大幅な改善を見せています。リーマンショック前の水準にまで利益水準を戻している企業も少なくありません。

 一方、国内の鉱工業生産指数を見ると、昨年の5月までは順調な回復を見せていましたが、米国の景気回復の遅れなどから、6月以降は5カ月連続のマイナスとなりました。その頃は二番底懸念も出ましたが、11月以降は比較的堅調に水準を上げつつあります。二番底の心配は今のところ少し遠のいたように思えます。「粗鋼生産高」を見てもピークの月産1千万トンには届かないもの、900万トン前後の水準をこのところは維持しています。

 ただし、懸念材料は資源高です。09年度に前年比マイナス19%まで落ち込んだ輸入物価ですが、10年の初めから上昇に転じました。このところの上昇幅は5%程度とそれほど高くありませんが、これは円高による要因が大きいのです。資源価格や食料価格は「高騰」と言ってよいほどドルベースでは上昇していますが、円高が80円台前半にまで進んでいるために、円ベースではその上昇幅が抑え込まれている状況です。それでも1月の貿易収支は赤字になるなど、資源価格の上昇はボディブローのように日本経済に影響を及ぼしつつあります。

 輸入物価の上昇にも関わらず、消費者物価が上昇しないのは、需要不足がまだ残っているためで、世界の主要国の中で消費者物価が継続的に下落しているのは日本だけです。先に触れた「消費支出」とも関連しますが、日本の消費が、いかに弱いかが分かります。いずれにしても、このところの急激な原油価格や食料価格の上昇が、短期的なもので終わるのかどうかが、企業業績、ひいては日本経済に大きな影響を及ぼすと考えられます。今はまだ、円高でその影響が抑え込まれていますが、少し円安に振れるとその影響はかなり大きくなります。

 一方、日本経済に大きな影響を及ぼす米国経済でもガソリン価格の上昇が米国のGDPの7割を支える個人消費に悪影響を及ぼす懸念があります。いずれにしても、短期的にはこの資源価格の急上昇がどこまで続くのかに注目したいところです。