評論家社長、アイデア社長は会社をつぶす

2018.03.13発行 Vol.314
「評論家社長は会社をつぶす」。この言葉は経営コンサルタントの大先輩の一倉定先生のものであったと記憶しています。頭の良い社長でも、自分は先頭に立たずに、評論家のように会社のことを論じていることを非難したものです。もちろん、リーダーは、社員とは違った立ち位置から会社を見ることも大切ですが、それでも当事者意識がとても重要で、「自分が先頭に立ってなんとかしよう」と思わない限り、部下はついてこないし、業績も出ないものです。

 そのこととも関連して、私は、初対面の方でも10分間ほど話をしていると、だいたいその人が成功するかどうかが分かります。何を見ているのかというと、うまくいかない理由などを他人や環境のせいにするかどうかで、その人の人物を判断しているのです。つまり、当事者意識を持っているかどうかということです。とくに社長やリーダーは、自分が何とかするという気概と、それにふさわしい能力が必要です。ただし、能力のほうは、部下や外部の人に助けてもらうということができます。ただ、気概ややる気は、他の人のものを借りることはできません。

 私はよく講演や本などで、リーダーに求められる「二つの覚悟」ということを述べます。「先頭に立つ覚悟」と「責任を取る覚悟」です。この二つの覚悟がなければ、部下は安心して精一杯働くことはできないのです。評論家社長には、この二つの覚悟がなく、当事者意識がないのです。

もうひとつ、一倉先生は「アイデア社長は会社をつぶす」ともおっしゃっていました。これは、社長はアイデアを出すなという意味ではないと私は解釈しています。そうではなく、社長の出したアイデアを絶対視しないことが大切だという意味ではないでしょうか。社長が出したアイデアも「仮説」にすぎません。しかし、社長がそれを仮説だと思っていなければ、社長の言ったことなので、部下は必ず実行しなければならないのです。ひどい社長になると、自分が言いだしたアイデアを、自分は忘れているのに、部下はやり続けなければならないということもあります。

 一方、私は仕事柄、取締役会や戦略会議などに結構な数出席しますが、場合によっては社長の独演場となってしまっている場合も少なくありません。とくにカリスマ経営者のいる会社での会議はそのようになりがちです。そうすると、部下はなにも言わなくなります。その場合、社長が色々とアイデアを出します。社長からすれば、「部下からは何もアイデアが出ない」からと考えがちで、自分しかアイデアを出せないと思ってしまいます。しかし、部下もアイデアをたくさん持っているものです。でも、責任を取らされるのが嫌なのでそれをあえて言わないのです。ましてや、聞く耳を持たない経営者の場合にはなおさらです。

いずれにしても、社長は評論家にならずに当事者意識を持つとともに、社長のアイデアも部下のアイデアも「仮説」にしか過ぎず、それを検証することが必要だという気持ちが大切です。


【小宮 一慶】