見かけ倒しのホワイトカラー・エグゼンプションに思う

2015.01.13発行 Vol.238
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 年初に、厚生労働省が「ホワイトカラー・エグゼンプション」の制度案をまとめたと新聞報道がありました。この「ホワイトカラー・エグゼンプション」という制度は、働く時間に応じて給与を支払うというものではなく、成果に焦点をあてて給与を支払うというものです。たとえば、コンサルタントの仕事で100時間かけてレポートをまとめても、10時間かけても、成果物の程度が同じなら、ほぼ同じ給与が支払われるというものです。成果物さえ満足いくものであれば、長い時間働こうが短い時間であろうが、給与には関係しないということです。腕の良い人には有難い制度ですが、そうでない人には厳しい制度ということになります。政府の案では年収1075万円以上の人が対象となるとしています。

 私は、原則、「ホワイトカラー・エグゼンプション」に賛成です。ただし、ホワイトカラーすべてに適用すべきではなく、ホワイトカラーの中でも「頭脳労働」を行っている人に限定すべきだと思います。一方、頭脳労働者については、年収額も500万円以上など、政府案よりもっと低い給与からを対象にすべきだと考えます。

 まず、「頭脳労働」についてですが、頭脳労働とは、ホワイトカラーの中でも能力差によって、時間と関係なく、パフォーマンスが大きく変わる職種を言います。経営はもちろんのこと、研究や一部の営業職、弁護士や会計士、税理士などの専門職、私たちのようなコンサルタントの一部も含まれます。一方、ホワイトカラーでも、一般事務のようにある程度時間に比例して成果が出る仕事については、残業代もきちんと支払うべきだと考えます。

 頭脳労働者については、必ずしも時間をかければ成果物がより良くなるということはありません。たとえば、経験が少ないコンサルタントが、ある案件のアドバイスをするには、多くの調べものが必要です。場合によっては、経済や会計、戦略論やマーケティングの基礎から勉強しなければならない人もいるでしょう。一方、経験や知識が十分な人なら、経験の浅い人の10分の1以下の時間でより良い結論を考え出せることもあります。さらにすごい人になれば、直感で瞬時に答えを出すことも可能です。

 このような状況で、時間を基準に給与を支払われるのは、おかしなことだと思います。違う見方をすれば、「頭脳労働者」は、経験やそれまでの勉強が生きる仕事です。勉強や経験など「事前の準備」ができる仕事なのです。それまでかけた膨大な時間がアウトプットを出すのに生きる仕事で、直接作業に関わっている時間だけで判断すべきではないのです。一方、工場での労働同様、ホワイトカラーでも事務処理に近い仕事をする場合には、時間とアウトプットはほぼ比例するので、従来通り、かかった残業代などは、企業は支払うべきだと思います。それらの職種は、事前の勉強や準備もそれほど必要のない職種です。

 いずれにしても、政府案は年収が1075万円以上を対象とするようで、一般企業ではかなり年収の高い人たちが対象です。中小企業では幹部クラスです。大企業も含めて元々残業代が支払われる対象にはなっていない人も多いと思います。ですから、制度自体は発足しても、経営に大きなインパクト与えるものではありません。アベノミクスの他の「成長戦略」同様、このままの制度で発足すれば、見かけ倒しのひとつにすぎないのです。これではほとんど何も変わらないでしょう。

 やるなら本当に効果が出るやり方、たとえば先に述べたように、対象をこれまでの経験や勉強が生きる知的労働者に限り、その代り年収を500万円程度以上にするなどの必要があります。また、ホワイトカラーでもアウトプットが時間の多少にかかわる事務作業のような仕事では、これまで以上に残業代をきちんと支払うようにするべきです。いずれにしても、どのような職種でも、働きがいが持ててルンルン気分で仕事ができるのが理想ですね。