衆議院解散に思う

2017.09.26発行 Vol.303
安倍首相が臨時国会の冒頭で解散に踏み切ることになりました。現在の衆議院議員の任期が来年の12月ですから、もうそろそろ解散があってもおかしくない時期なのですが、なぜ今かと違和感を覚えた方も少なくないと思います。

一部報道によれば、「森友学園」「加計学園」問題などで一度大きく落ちた支持率が、このところ少し回復をしている、さらには、民進党がガタガタの状態の中、新興勢力で読みが難しい「日本ファースト(「希望」になる予定)」が十分な体制を整える前での解散がベストだという判断のようです。加計学園などの問題とともに、稲田前防衛大臣、今井絵理子議員、離党した豊田真由子議員などの問題もあり、自民党も議席数を減らすことは覚悟の上で、この先さらなるリスクが表面化して、さらに支持率が落ちない今のうちが解散の潮時だということもあるようです。

今、報じられているところによれば、臨時国会の冒頭に解散を行うことで、野党からの質問を封じる作戦のようです。野党に厳しく追及されると再度支持率が下がると考えたからでしょう。首相の大義名分としては、教育の無償化などを掲げていますが、取って付けた感は否めません。

松下幸之助さんが、「どんな策でも所詮は策を弄している」と、策を弄することを戒めておられますが、策以外の何物もない解散のように私には映ります。政治や政治家は所詮そのレベルなのでしょうか。

日本は、超高齢社会の入り口にいます。現状、総人口の28%弱を占める高齢者の割合は、今後、40%近くまで上昇することが予想されています。これに伴い、現状、対名目GDP比では先進国中最悪の財政赤字を抱えていますが、それがさらに悪化する予定です。

そもそも根本的な問題は、この国の経済が成長しないことです。今年の初めに、GDPの計算方法を変えた以外では、1990年代初頭から、この国のGDPは伸びていないのです。GDPは国民の給与の源泉で、ひとり当たりの給与のピークは1997年という状況です。いまから20年前です。もちろん、GDPの統計の取り方を変えても、給与が増えないことは言うまでもありません。

90年代初頭に比べると、米国のGDPは約3倍、中国にいたっては20倍近くも伸びているのです。もちろん、それに応じて所得も増加しています。海外に行かれる方は感じておられるかもしれませんが、先進国のどこへ行っても物価が高く感じるのは、日本が成長せず、物価も給与も伸びていないからです。

私は、日本が成長しない大きな原因は、既得権益が規制で過度に守られているからだと思っています。「加計学園」問題を見ても、もちろん、首相がお友達を優遇することなど絶対に許されませんが、獣医学部が50年間も新設が認められないことも異常としか言いようがありません。獣医師の料金が高いだけならまだしも、口蹄疫や鳥インフルエンザが毎年脅威を与える中、十分な獣医師がいるとはとても思えません。それでも、既得権益を守ろうとしているのです。もちろん、弱者の保護は必要ですが、規制緩和は急務です。

衆議院を解散するのはかまいませんが、北朝鮮問題は言うまでもなく、しっかりとこの国の将来を見据えた本質的な論点を議論して欲しいものです。

【小宮 一慶】