苦しむ米中欧経済

2011.07.12発行 Vol.154
 先週末に米国の6月の雇用統計が発表になりました。失業率は9.2%と前月の9.1%よりさらに悪化、何よりもエコノミストたちを驚かせたのは「非農業部門」の雇用増加数が1万8千人しかなかったことです。市場予想を大幅に下回ったため、市場を大きく失望させました。

 非農業部門の雇用増加数はエコノミストたちが大変注目している数字です。今年の2月から3ヶ月連続で20万人前後の増加でしたが、5月にはそれが5万人台にまで落ち、6月は先ほども述べたように1万人台にまで大きく落ち込んだのです。オバマ大統領もこれに対し懸念を表明しました。

 また、米国では住宅市況が一向に改善の兆しを見せません。バブルだった2005年には年間2百万戸を超えていた住宅着工数も、60万戸を切るペースがここ3年近く続いており、ピークの3分の1以下の状態です。これはバブル期に建った住宅で、差し押さえられた物件も多く、中古住宅市場がだぶついているのに加え、昨年夏に比べて長期金利が上昇したことなどが原因です。

 米国では、6月末にQE2(金融の量的緩和第2弾)が終了し、金融的には正常モードに戻ろうとしているところですが、なかなか雇用、住宅ともに上向かないのが現状です。企業業績や個人所得などは比較的堅調なのですが、自動車などは東日本大震災による部品不足の影響があり、まだ本来のペースには戻っていません。市場も神経質になっており、主要指標が発表されるたびに、一喜一憂する状態が当面続くと考えられます。

 中国経済にも大きな懸念材料があります。インフレです。3月以降3ヶ月連続で年率5%を超える消費者物価の上昇を記録しましたが、6月にはとうとうそれが6%を超えてしまいました。5%超は中国にとって「危険水域」と言われ、中国政府もインフレを抑えこむのに躍起になっていますが、なかなかコントロールができていないのが現状です。

 インフレは低所得者層を直撃し、社会不安の大きな原因となります。先に述べた米国の量的緩和の影響で投機資金が市場に流入したことや新興国の進展で、資源や食料価格が高騰し、中東ではエジプトやチュニジアなど政権が変わるきっかけを作りましたが、中国政府も非常な警戒を見せています。内モンゴルで緊張が高まりましたが、一部報道では天安門事件以来の厳しい警戒を敷いているとも言われています。  中国政府はインフレに対抗するために、金利の引き上げを段階的に行うとともに、人民元を小刻みに連続的に切り上げることで輸入物価抑制に必死になっています。昨年来のストライキの頻発で労働者の賃金が引き上げられつつあることともあいまって、輸出競争力を落としかねない状況です。

 中国の輸出自体は、現状前年比20%程度伸びていますが、輸入物価の上昇もあり輸入は30%ほど増加しており、今年に入り貿易黒字額は大きく減少しています。貿易黒字の減少は、成長を鈍化させることにつながります。

 欧州ではご承知のように、ギリシャ、ポルトガルの危機が断続的に続いています。ユーロ安のおかげでドイツやフランス経済は比較的好調ですが、大きな危機の火種を抱えています。

 いずれにしても、日本の復興には米国や中国の成長は欠かせません。あなた任せの状況ですが、各国ともに非常に頭の痛い問題を抱え、難しい経済運営に直面しているという認識は必要です。そういう状況で日本の政治がなんともふがいないのを本当に残念に思います。