経営者は手元流動性を高めてショックに備えるべき

2011.09.27発行 Vol.159
 あまり悪い話をしたくはないのですが、世界経済の不確実性が高まっています。ギリシャの債務問題に関してデフォルト(債務不履行)の可能性が高まり、欧州金融界はパニックに陥っています。ギリシャ国債を多く持つ欧州の金融機関にも不安が広がっています。ギリシャがデフォルトに陥った場合、このような状況の常で、「次探し」が始まります。ポルトガルは言うに及ばず、それが、イタリアやスペインに飛び火した場合には、非常に大きな「ショック」が生じるでしょう。経済学で「ショック」という場合には、単なる「衝撃」といった内容ではなく、これまでのあり方と違う「不連続」な傾向が顕著になることを言うのですが、もしギリシャがデフォルトになれば、場合によっては100年に一度と言われた「リーマンショック」を超える経済への影響が出る可能性があります。

 現状は、金融界に不確実性が広がっている段階です。実体経済は徐々に下降局面にはあるものの、今のところそれほど大きな後退には陥っていない状況ですが、金融がおかしくなった後は、日本のバブル崩壊時、さらには、リーマンショックの後と同様の、経済への悪影響が懸念されます。

 日米欧の中央銀行は、リーマンショックの引き金となった「パリバショック(サブプライム危機)」時と同様に、ドル資金を市中に大量に供給するオペレーション(市場操作)をすでに開始しており、リーマンショック前と同じような緊張感が、世界の金融界には漂っています。ただ、リーマンショックの時もそうでしたが、実体経済に大きな影響が出るまでは、一般の企業も政府も対応を取らないのがこれまでの通例です。ただ、金融危機が起これば、かなり高い確率で、実体経済にも影響が出るのは経験則上間違いがありません。

 数週間前のニューズウィーク日本版を読んでいたら、「もしギリシャが米国のひとつの小さな州だったら、問題は簡単に解決するだろう」という論文が載っていました。ギリシャの経済規模はGDPで30兆円程度と小さく、確かに米国の小さな州程度です。もし、米国のある州が経済危機に陥っても、同じ国の中ですから、米国政府は経済的、あるいは政治的援助を行うことは間違いありません。

 ただ、ギリシャはひとつの独立国です。欧州最大の経済大国であるドイツの実力からすれば、ギリシャを救うことはそれほど難しくありません。あるいは、EUが「EU債」を発行し、その資金をギリシャやポルトガルに貸し付ければ、危機は一気に解決することは、皆が理解していることです。ただ、独立国であるドイツが他の独立国であるギリシャに大規模な支援を行うことには、ドイツ国民には大きな抵抗があります。さらに、ドイツの裁判所は、今後もしメルケル首相が議会の承認なしにギリシャへの援助を行えば、憲法違反の可能性があるとの判断を示したことから、首相の判断だけではギリシャ支援が行えない状況となっています。

 つまり、この状況を打破するには、EUが「国」という枠組みを超えたさらなる結束をするか、あるいは、ギリシャをユーロ圏から切り離し、通貨を元のドラクマに戻し、EU、ユーロ圏の問題ではなく、ギリシャ独自の問題とした上で、ギリシャ国債などを多く持った各国の銀行を救済するなどの状況に追い込まれる可能性も否定できません。そして、いずれにしても、ギリシャ問題が根本的に解決するには、かなり多くの難関を乗り越えなければならないことは確かで、先にも述べたように、この問題がイタリアやスペインに飛び火した場合には、ギリシャとは経済規模が違いますから、かなり大きなショックが欧州経済、ひいては世界経済に起こる可能性があります。金融界はこのショックを警戒して、現状は、悲観一色の状況となっています。

 もちろん、これまで同様、人々は解決のために知恵を出すとは思いますが、欧米各国が財政を縮小する中、もし、これに加え欧州でショックが起きたら、かなり長期間にわたり厳しい状況が予想されます。この場合、日本も無傷では済みません。経営者は、このような状況では、保険だと思い、当面は手元流動性(現預金やすぐに借りることのできる資金)を普段より厚めに持ち、ショックに備えることが大切だと私は考えます。(もちろん、何も起こらないことを期待していますが、現状は先行きがかなり不透明です。)