経営判断は一方通行ではない・・・スカイマークの事例を考える

2014.08.26発行 Vol.229
 スカイマークがエアバス社の大型機A380、6機の購入を断念したことが話題となっています。業績好調時に1915億円で購入する契約を結んだのですが、業績が悪化し、支払いが滞り、エアバス社から解約を通知されたというものです。同社の損益計算書を見ると、平成25年3月期に約47億円あった営業利益が、26年3月期には25億円の赤字となっています。

 損益の悪化がエアバス解約の大きな理由であることは間違いありませんが、私は、スカイマークがA380、それも6機も購入しようとしたことにもともと大きな無理があった、というよりは無謀だったと考えています。損益計算書だけでなく貸借対照表も見ないと同社の実力は分かりません。

 貸借対照表では、26年3月末の総資産が787億円しかありません。その会社が1915億円もの買い物をすることに無理があるのです。同社ではこれまで多くの機材をリースしていました。ここから先は私の推測ですが、おそらくA380についても当初の資金負担の小さいリースを考えていたと思います。しかし、同機は転売市場での人気がなくリース会社がリースをしないとも言われており、スカイマークは購入という判断をしたものと思われます。この判断が大きな誤りなのです。リースが不能となった時点で購入を断念するか、あるいは、購入機数を、とりあえず1機程度にしておけば良かったのです。

 戦略上は、超大型機で成田‐ニューヨークというドル箱路線を狙ったわけです。これは同社が、航空市場に参入した際に、羽田‐福岡というJALやANAにとっての超高収益・ドル箱路線を狙ったのに似た戦略です。しかも、A380という大型機で大人数を大量に運べば既存のキャリアより安くできると考えたのでしょう。そのこと自体は、戦略上は間違いではありません。

 しかし、自社の体力からみれば、1千億円単位の投資は、無謀と言わざるを得ません。自社の資産規模や収益力からみて、少しでも収益環境に変化が起これば投資や事業の継続が難しくなることは明らかだったはずです。そして、収益環境が変わってしまったのです。

 エアバス社としても、転売の難しいA380をスカイマークのために製造し、一部は完成、一部は仕掛り状態になっているわけですから、相当の損害賠償を求めるものと考えられます。そうした場合に26年3月末で約70億円あるスカイマークの現預金では賄えない可能性があります。その際に、銀行が支援するかどうかが焦点となりますが、スカイマークはこのところ無借金経営を続けてきたことから、銀行との関係が十分でないとも言えます。今回の解約問題でもおそらく事前に銀行に融資を願い出ていたのではないかと推測されますが、それもかなっていないことが考えられます。一説で言われている700億円程度の賠償金を支払えば、同社は債務超過に陥る可能性もあるので、今後の収益力にもよりますが、銀行としては二の足を踏むところでしょう。

 エアアジアをはじめ、M&Aの話も出ています。同社が持つ羽田空港の発着枠は魅力かもしれませんが、それだけで火中の栗を拾う会社は少ないはずです。日本国政府としてはエアバスひいてはEUとの関係を悪くしたくないので、羽田の発着枠を喉から手が出るほど欲しいJALにスカイマークを救済させたいところでしょうが、果たしてうまくいくでしょうか。いずれにしても、経営判断の甘さが今回の事態を引き起こしたことは、私たちも肝に銘じなければならないことです。