素直~Accept

2020.08.11発行 Vol.372
私は、東京にいるときには松下幸之助さんの『道をひらく』を読んで寝ることを習慣にしています。小さな本ですが、見開き2ページに一つの文章が載っており、それが121あります。それを2つか3つ読んで寝るのです。1991年に10年強務めた東京銀行を辞め転職したころからずっとそれを続けているので、もう28年は続いていると思います。年に5回ほど同じ本を読んでいるので、もう140回ほど読んだと思います。おそらく死ぬまで続けるでしょう。
そもそもこの本を何度も読み続けている理由は2つあります。ひとつは、経営コンサルタントとして、日本で20世紀最高と言われる経営者の考えを身に着けたいと考えたからです。仕事柄、難しい判断をしなければならない時もありますが、そのときに「松下さんならどう考えるか」という基本を持ちたかったからです。私の判断の誤りが多くの方に迷惑をかけることにもなりかねないのです。そして、セミナー会員さんはじめ、多くの方の前でお話させていただく機会も少なくありませんが、間違ったことをお伝えすることは極力避けなければならないのです。
また、私自身も15名ほどの小さな会社を経営していますが、経営者として自分がブレることももちろんあります。それを訂正するにも、この本を読み続けることはとても大切だと私は考えています。
『道をひらく』に関連して、ここ数年行っていることがあります。それは、この本には英文訳(『The Path』)があるのですが、ときどき、原文をその英文と見比べることです。「これを英語で何というのかな」と思った時に、辞書代わりに英文を読んでいます。
松下幸之助さんは、「素直」ということをとても大切にされていました。『素直な心になるために』という本まで出しておられます。松下さんが80歳を過ぎたときに、自分の素直さをより高めるためという目的で作られた本だと聞いたことがありますが、それだけ「素直」ということを大切にされていました。
その素直ですが、『道をひらく』に「素直に生きる」というタイトルの項があるのですが、『The Path』では「Accept what comes」と訳されています。目の前にあるものを受け入れるということですね。また、他の項では、素直を「open mind」と訳しているところもあります。広い心ですべてを見るということでしょうか。
松下幸之助さんの別の本を読むと、素直というのは、物事を受け入れて、それに前向きに対応することだと書いてありました。受け入れるだけでは不十分で、前向きに対応するということです。コロナの影響がどこまで続くのかが分からず、不安で閉塞感のある時期ですが、その状況をあるがままに受け入れるとともに、多くの情報をきちんと分析して、できることを前向きに対応することが大切だということでしょう。
小宮 一慶
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