策を弄した安倍政権は策に溺れることとなるか

2014.09.24発行 Vol.231
 このところ報道されているように、景気は停滞感を強めています。私は、今後も景気はしばらくもたつくと考えています。7月の現金給与総額は前年比で2.6%アップと、近年にない上げ幅を記録しましたが、7月は賞与の支給額が増えたための一時的要因が大きく、基本給の上げ幅は1%程度です。一方、消費者物価は消費税増税の影響も大きく、7月で3.3%の上昇で、給与の上げは全く追いついていません。日本のGDPの55%強を支えているのは家計の支出ですから、この現状では景気は停滞感を強めると考えられます。

 また、ここひと月ほどで円安が急速に進んだため、グローバル企業の海外での円換算での業績はアップしますが、輸入物価上昇により、家計や中小企業はさらに悪影響を受けかねません。

 タイトルに「策を弄した」とあるのは、来年10月の消費税率上げに関してです。麻生財務大臣や安倍首相は、来年10月の消費税率上げについては、主に今年7-9月のGDPの結果を見て判断すると、昨年から繰り返し発言していました。以前にもこのメルマガで述べたかもしれませんが、私は彼らの発言を聞いた時から、来年の消費税率上げは必ずあると思っていました。

 それは、どういうことかというと、GDPの成長率の計算は、「前年同期比」ではなく、「前四半期比」の年率換算だからです。つまり、前四半期と比べるので、前の四半期の成績が良ければ、次の四半期は落ちやすく、逆に、前四半期が悪ければ、次の四半期は上がりやすい傾向があります。

 これを現状に当てはめると、今年1-3月は増税前の駆け込み需要もあり大幅アップ(実質で年率6.0%アップ)、4-6月は前四半期が高いことと消費税上げもあり大幅ダウン(同マイナス7.1%)となりました。先ほども述べているように、前四半期比で計算しますから、4-6月が大きく落ちたことから、現在の7-9月は上がりやすい状態にあります。そして、景気が停滞しているにも関わらず、おそらく、成長率はプラスに転じると考えられます。

 ここまでは、政府の筋書き通りだったのです。11月半ばに発表される7-9月のGDPの数字を見て、安倍首相は「景気も回復しているので消費税率を上げます」と言いたいところでした。

 実は、今年4月1日に行われた消費税率上げは、昨年4-6月のGDPを主な判断材料としてなされました。来年10月は昨年4月に比べて1年半後ですから、本来なら今年10-12月のGDPを見て判断されるべきですが、それを7-9月とわざわざ前倒ししたのは、先ほども述べたように、それが高い確率で成長するからだったのです。策を弄したわけです。さらには、7-9月のGDPは11月半ばに発表されますので、来年度の税制改革や予算編成に十分に間に合うという思惑もあったのです。

 ところが、冒頭に述べたように、7-9月の経済が、8月の天候不順もあり、思わしくないのです。4-6月が大きく沈みましたから、7-9月はプラスに転じると思いますが、その成長率が低く、なおかつ今後の見通しが暗い場合に、来年4月の統一地方選も控えて、首相は判断に困るはずです。税率上げは景気にもちろん悪影響ですが、財政事情が極めて悪い中、税率上げを先延ばしにすると、国債の格付けなどにも影響が出る可能性があります。

 策を弄したことが、結局、自分の首を絞めることともなりかねません。いずれにしても、これは政府に限ったことだけでなく、自分にも言い聞かせなければならないことです。策を弄するとろくなことはないのです。