直感が冴える人

2016.11.22発行 Vol.283
「直感が冴える人」

昨日の朝、比較的早い時間ののぞみに乗って移動していたら、前の席に座っていた40歳前くらいのカップルのうちの男性が、通りかかったパーサーに「切符をなくした」と困った顔をして立ったまま話しました。パーサーは、どこの駅で最後に切符を確認したかと聞いていましたが、「品川駅の自動改札を通り、ホームまでは手に持っていた」と男性は答えました。パーサーは「品川駅に拾得されていないか確認しますね。その間にもう一度ご自身の持ち物を確認してください」と言いました。男性は、何度も確認したという顔をしました。そうしたら、パーサーは、「念のために座席を調べさせてください」と言って、その男性を移動させて、座席のクッション部分を外しました。移動させられた男性は怪訝な顔で見ていましたが、なんと切符は、シートの隙間に落ちていたのです。普通では見えない状態でした。

私はそれを見ていて「すごいな」と思いました。ベテランのパーサーだと思いますが、普通は、切符が座席の上から見えない状態で、クッションを外してまで調べるという発想は浮かばないはずです。そのパーサーの経験からか、直感が働いたのです。男性は何度もパーサーにお礼を言っていました。

その光景を見て、私はあることを思い出しました。25年ほど前に、当時の私のボスと一緒に、経営コンサルタントの大先輩の船井幸雄さんを訪ねたことがありました。船井さんは当時、世界で初めてコンサルティング会社を上場させたばかりで、とても忙しかったと思うのですが、私たちにわざわざ時間を割いていろんなことを教えてくださいました。

そのときに、私が船井さんの机の上に何ひとつ書類が載っていないのを見て、「机の上に書類がないなんてすごいですね」と言うと、「直感で判断するので、書類が溜まらないんです」とおっしゃいました。「直感?」と当時30代前半だった私は思ったものですが、修練を積んだ人の直感というものは、侮れないものがあります。松下幸之助さんも、同様のことをおっしゃっています。

私も60歳に近づき、コンサルタントとして独立して20年以上が過ぎましたが、ようやく船井先生のおっしゃっていたことが分かるようになりました。いろんな資料を丹念に見ることも大切ですが、直感が冴えて、直感で判断できるまでレベルが上がらなければならないということです。簡単なことでも判断の遅いリーダーがいますが、そういう人は、正しい考え方や経営の原理原則の基準を持っていないのです。持っていたとしても、判断できるレベルまで修練を積んでいないのです。

先日『そろそろ、何かしなくちゃ。』という本を出しました。いろんな方の名言100を取り上げて私が解説しているものですが、その本の中で横綱白鵬の「勝ち抜いていくためには、決して“勝ちにいって”はならない。流れの中で勝機をつかむことが大切だ。」との言葉を取り上げています。常に自然体であることとともに、自然に体が動くまで普段からの修練をしておく必要があるということでしょう。

直感が冴えるくらいまで、あるいは、自然に体が動くほど、修練を重ねて仕事の腕を上げたいものですね。

【小宮 一慶】