目の前のことを精一杯やる

2011.03.22発行 Vol.147
 東北、北関東を大災害が襲いました。亡くなられた方たちのご冥福を心よりお祈りするとともに、被災された方々には、一日も早い復興を願っています。

 この震災により、日本経済は影響を受けることは避けられません。東北地方の経済活動が従前のように行えないことだけでなく、自動車部品の供給が滞るなど、他の地域にも影響が出ています。さらには、関東地方では、電力不足や電車の運行に影響が出ていることから工場などの操業や営業活動に影響が出ている会社も少なくありません。また、これだけの震災直後ということもあり、宴会や催し物、社内旅行などの自粛もしばらく続きそうです。

 10―12月のGDPがマイナスだったものの、日本経済はようやく底堅さが見えてきたところだったのですが、しばらく停滞しそうな感じです。国債の格下げも心配です。そんな中、企業や投資家が海外にある資産を売却し、円に換えるという思惑から、円は投機筋により米ドルに対し一時76円台まで買い進まれましたが、現状、これ以上の急激な円高は日本経済に悪影響を及ぼす可能性が高いと考えられます。そのため、介入や投機の規制などで、政府はこれ以上の円高阻止に全力を尽くしてもらいたいものです。また、財政問題は深刻なものの、復興のための予算を早急に確定し、可能な限り早くそれを執行するべきなのは言うまでもありません。(経済の見通しに関しては、それほど長い文章ではありませんが、「日経BPネット」の連載に書いてありますのでそちらを参照してください。http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110317/264074/?P=1)

 さて、こうした現状、先にも述べたように、東京では交通網が乱れたり、一部の企業では業務に支障が出たりしていることは事実です。早帰りを行っている企業も少なくありません。しかし、だからと言って仕事をいい加減にやってもよいということではないはずです。私たちは、私たちがやるべき目の前の仕事を精一杯やることが、経済をいち早く立て直し、被災された方々のためになることではないでしょうか。無念な気持ちで亡くなられた方たちへの一番の供養となるのではないかとも思います。

 ベストの環境で仕事ができないとしても、限られた時間、限られた条件の中で精一杯目の前のことをやらなければなりません。制約条件があることを言い訳に、また、それを隠れ蓑のようにして、「適当に」仕事をしてはいけないのです。もちろん、普段と同じ環境に置かれている方たちは、これまで通りに、あるいは、これまで以上に目の前のことに全力を尽くすことが大切なのです。

 もうひとつ大切なことは、普段の状況が「有難い」という感謝の気持ちを持つことです。地震の日に電車が動かず、深夜にやっと動き出したぎゅうぎゅう詰めの電車の中で、都心で合流した娘とともに日付が変わってから帰宅する途中、ふと思い出したことがありました。18年前にカンボジアのPKOに選挙監視員としてボランティアで行っていた時のことです。

 タイのウタパオという空軍基地から、40キロ近い荷物を自分でかついで国連軍のC-130輸送機に乗り込み、それをプノンペンのポチェントン空港で滑走路を歩いてロシア製大型ヘリコプターに乗り換えて、タケオの自衛隊基地に入り、さらに、そこからピックアップトラックで2時間以上かけて電気もガスも水道もない地域へ選挙監視のために移動しました。選挙監視と開票作業を終えて、約ひと月後に同じように重い荷物を自分で運びながら、最後はバンコック国際空港に戻った時に、自動ドアや冷房、そして、ターンテーブルから荷物が出てきたときの感動を思い出したのです。普段「当たり前」と思っていたものがなくなると、本当に日常の「有難さ」を感じるものです。今一度、私たちは感謝の気持ちを持つべきではないでしょうか。被災地の一日も早い復興をお祈りするとともに、私たちがそれぞれできることを精一杯やるという決意を新たにするべきときだと思います。