現場を見るということ

2015.03.24発行 Vol.243
 最近、こんなことがありました。当社では、会員企業さんに集まっていただくセミナーを、東京と大阪で年に6回ずつ行っています。そのうちの5回は、私が4時間半を話すというものです。先週は、大阪でのセミナーがあり、午前10時からザ・リッツ・カールトン大阪で行いました。

 午前中1コマとお昼休みを挟んで午後から2コマの講義があるのですが、演台から見ていて、午前中は90ある座席に少し空席があるといった感じでした。お昼をお客さまととり、会場の外まで戻り、ドアの外からちらっと会場を見ると、お客さまが増えているのではないかと少し心配になりました。昼の講義から来られる方もいらっしゃって、席が足りなくなることがあるからです。私はスタッフのひとりに、座席が足りなくなるのではないかと尋ねたところ、そのスタッフは「午前中に数えたところ、75名ですから、大丈夫です」と答えました。

 私もその答えを聞き、一瞬、大丈夫と思ったのですが、やはり心配になり、会場内に入って見てみるとほぼ満席状態でした。午後からさらに来られるお客さまもいるので、午後のスタート直前でしたが、そのことに気づいた別のスタッフがすぐにホテルに頼んで座席を追加しました。結局、91名のお客さまが来られ、座席を増やしていなければ、講演中に、座席の追加をしなければならなかったところでした。

 「75名」と言ったスタッフも、午前中のことを言っているので、別に間違ったことを言っているわけではありませんが、お昼休みにお客さまが何人も来られたことを把握していなかったのです。受付はセミナーの部屋のすぐ外にあるので、少し会場をのぞけば分かったことだと思いますが、自分が計算した「過去の」数字にとらわれてしまっていたわけです。やはり、その場、その場の現場を見なければ、実体は分からないということです。

 私の事務所のすぐそばに、セブン&アイ・ホールディングスの本社があり、それに隣接して直営のデニーズがあります。当社から一番近くで食事をできるところなので、お客さまやスタッフとよく訪れますが、そこで創業者の伊藤雅俊さんを3度見かけたことがあります。もう90歳で杖をついておられますが、ご自身で階段を上って来られます。

 5兆円以上の売上げを誇る日本を代表する小売業チェーンを築いた創業者ですから、デニーズのものを食べたければ、自室に持って来させることも簡単だと思います。しかし、それでは、味は分かっても、レストランの雰囲気やお客さま、従業員の動きなどは分かりません。それは、やはり現場にしかないのです。先に書いたホテルの座席の話は、最近あった些細なことでしたが、現場を見る大切さを考えさせられたことでした。