消費税増税議論を行うべし

2010.06.22発行 Vol.129
 菅首相が消費税を10%に引き上げることに言及したことが話題となっています。参議院選直前のこの時期にわざわざ消費税引き上げ、それも具体的な税率にまで触れたのは、参議院選を乗り切ったら、ぜひとも消費税の引き上げを含めた財政再建に取り組むという決意を表したものだと私は感じました。新聞社の世論調査では、消費税を引き上げることに関しての国民の意見は二分されているようで、内閣への支持率はいくぶん下がりました。私は現状の財政を考えれば、財政のムダを徹底的に省きながらも、消費税を引き上げるべきだと考えています。その点において、支持率下落や選挙を控えた民主党内から反対の声が出て、意見をトーンダウンした首相には少しがっかりしています。

 ご存じのようにギリシャの財政危機に端を発した欧州の金融危機が取り沙汰されていますが、日本の財政の状況は先進国中最悪の状況です。金融システムは信用で成り立っていますから、もし、ギリシャや他のいくつかの欧州の国々のように市場が「危ない」と判断すれば、一気に信用不安となる可能性があります。そして、その時期がこのままでは近付いているように私には思えます。ギリシャの財政赤字残高がGDPの110%程度であるのに対し、日本は200%を超える勢いです。もちろん、日本では国債の95%ほどが国内で消化されているので、ギリシャとすぐ同じようになるとは言えませんが、逆に、財政がおかしくなると主に個人金融資産が大きな打撃を受けるとも言える不気味な状況です。

 小泉内閣の時期に、プライマリーバランスを2011年度にはバランスさせると言っていましたが、現状はまったくそれとは程遠い状況です。プライマリーバランスは基礎的財政収支ともいわれますが、企業で言えば「営業利益」に近いものです。

 つまり、毎年の収入(売上高)と通常の支出(売上原価と販管費)との差額を表しています。今年度の予算では税収が約37兆円で、一般的な支出が約52兆円ですから、15兆円の営業赤字ということになります。しかも、企業会計のベースで考えれば、営業利益から金利などを調整したものが経常利益ですが、政府は毎年10兆円程度の金利を支払っていますから、経常利益の時点では25兆円程度の赤字となってしまいます。さらに、キャッシュフローベースでは、国債の元本返済などを含めた一般会計の支出は92兆円ですから、37兆円の税収ではまったく足りず、44兆円の赤字国債の発行と、今年は10兆円強の「埋蔵金」の掘り起こしで賄っているという状態です。現在、世界同時不況の影響で税収が大きく落ち込んでおり、景気が順調に回復すれば、あと10兆円程度の税収増加は見込めますが、それでも大きな赤字が続く計算になります。家計で言えば、年収370万円の世帯が日常的に520万円使い、ローンも含めた支出総額が920万円あるという状況はどう考えても異常です。

 消費税増税は所得が比較的低い層に影響が大きいですから、生活必需品などの減税は必要ですが、直接税と間接税の比率を改善したり、所得税などの納税を逃れている人への課税も行えます。

 財政破たんや金融危機のリスクを軽減するためには増税は必要ですが、もちろん、支出の切り込みも行わなければならないことは言うまでもありません。事業仕分けが行われていますがそれだけでは不十分で、行政刷新大臣のもとに会計検査院を統合するなど、もっと大規模なシステム的な歳出削減も行うことも重要です。

 いずれにしても、景気回復期の今の時期に財政再建の目処をつけておかなければ、次の景気後退期にはそれでなくとも危機的状況にある財政がさらに悪化し、金融不安を一気に引き起こすということにもなりかねません。