消費税増税議論に見え隠れするもの

2013.08.29発行 Vol.205
 来年4月の消費税増税に関して有識者会議が開かれるなど、増税の是非を巡っての議論が活発化しています。安倍内閣は有識者会議の結果や経済状況などを見て判断するとしています。経済状況を判断する上での景気指標としては、8月12日に既に発表になっている4-6月の国内総生産と10月月初に発表になる日銀短観を中心に考察されると思います。発表されたGDPはますます、日銀短観も良化しているのではないかと思われますが、その裏に見え隠れするものがあります。

 まず、財務省の思惑です。財務省にとっては是が非でも来年4月に8%まで消費税を予定通り上げたいのです。表向きは、増税により福祉財源を確保し、さらには財政赤字増加に歯止めをかけるということです。もちろん、福祉の維持と、GDP比では世界最高水準にある財政赤字に対応しなければならないことに反対する人はまずいないでしょう。しかし、本音のところでは、財務省は増税により自分たちの権力維持を図りたいのです。彼らにとって、予算の各省庁への分配権が何よりも権力の源泉だからです。

 財務省にとって最悪のシナリオは、財政赤字増加のために予算が削減されることです。財政赤字増加により、財政リスクが高まり、さらに予算配分の権限が縮小することなのです。その点、増税が行われれば彼らの権力の維持ができるわけです。法人税下げなども一部では検討されていますが、財務省から見ればとんでもない話なのです。

 消費税上げで景気が悪くなるリスクがあるから、公共事業を行うべきという意見も一部の自民党議員や政府内部にもありますが、これなど利権丸見えの卑しい発言と捉えられても仕方がないでしょう。

 日銀の黒田総裁が消費増税を行っても景気に影響がないと発言した裏にも、元財務相高官である黒田氏が、日銀総裁の「仮面」をかぶって発言したとの見方ができます。古巣への恩返しです。

 有識者会議はまだ続いていますが、その途中経過の報道によれば、来年4月の3%増を主張している方が多いとのことです。これにも政府や財務省の思惑が見え隠れします。そういう意見を言いそうな人を最初から選んでいる可能性があるからです。私が月曜日に出演した毎日放送の「ちちんぷいぷい」でも街の声を聞いていましたが、大阪ということもあるかもしれませんが、増税するにしても1%という意見が圧倒的に多かったのとは対照的です。

 一度、消費税上げを公言したことと現状の財政事情を考えれば、もし増税を撤回すれば、国債の格下げ、ひいては金利上昇のリスクもあるため、来年4月に消費税を上げないというシナリオは考えにくいと思われます。しかし、現金給与総額が長い間の下落からようやく0.数%上がり始めたにすぎないこと、そして貯蓄率が3%程度しかなく、消費税上げは直接可処分所得減少につながることを考えれば3%の一気の増税は景気を腰折れさせるリスクがかなり高いと考えられます。また、今年度予算では約43兆円の税収を見込んでいますが、景気が回復していることから、税収の上ぶれも予想されます。

 こうしたことを考えれば、私は来年4月に1%の増税を行い、その後、毎年原則として1%ずつ上げるのが良いと思います。景気の状況が悪ければ0%、良ければ2%というように柔軟に対応すればよいと考えます。

 事務処理が大変という意見もありますが、この際、すべて「外税」にすれば、毎年のシステムのマイナーな変更で対応できるはずです。

 いずれにしても、景気を腰折れさせないことが重要です。増税の目的は国民の生活を守るためであって、財務省のためではないことも明らかです。さらには、10%まで消費税を上げても、現状の高齢化の進展や財政事情を考えれば、全く不十分です。7割の法人が法人税を支払っていないことなどを考えれば、課税ベースを広げた上での法人税の「減税」や、当然のことながらムダな経費の徹底的な削減が必要です。もちろん、経済を成長させることが何よりの解決策になります。消費税増税の問題が、大きくクローズアップされていますが、「成長戦略第2弾」にももっと注目すべきなのです。