消費税増税と産業政策

2012.08.14発行 Vol.180
 先週米国を訪問したので、そのことを本号のメルマガで書こうと思いましたが、消費税増税が国会で決まったので、今回はそのことを書き、米国訪問については次回のメルマガに書くことにしたいと思います。

 皆さんもご承知のように、社会保障と税の一体改革法が10日の参議院本会議で可決され、それにより消費税が2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げられることとなりました。実質GDP成長率が3%、名目で2%となるように経済対策を行うことが前提ですが、これは条文をよく読むと「努力目標」に過ぎないので、経済がどういう状況でも、期日が来れば消費税が引き上げられる可能性が強いと言えます。

 現状の日本経済を見ると、短期的には復興需要もあり、なんとか下支えされていますが、成長力は弱いと言えます。昨日発表された4-6月期のGDPも、インフレやデフレを調整後の実質では4四半期連続の成長ですが、実額を表す名目ではマイナスとなっています。また、欧州危機により、欧州経済はもとより、米国、そして中国をはじめとする新興国の成長も鈍化しているのが現状です。こうした中、消費税の増税が行われます。

 もちろん、対名目GDP比200%という先進国中最悪の財政状況を考えれば、増税もやむを得ない部分もありますが、いくつかのことを考えなければなりません。

 私は、自民党支持者でも民主党支持者でもありませんが、民主党政権になり、ばらまきを行ったせいで予算規模が自民党時代よりも大幅に増額されているということへの認識が必要です。野田総理は、消費税上げが決まった直後の記者会見でマニフェスト違反に対して申し訳ない旨の発言をしていましたが、消費税増税もマニフェスト違反ですが、「予算を組み替えてコンクリートから人へ」を行うとしていたマニフェストも全く無視されていることには言及していません。むしろ、予算の組み替えを先に行うべきではなかったのでしょうか。「仕分け」というパフォーマンスを行ったものの、ムダをなくして予算が減るどころか増加しているのです。公務員改革など、ほとんど手つかずの状況です。

 さらには、景気対策、それも経済政策をもっとしっかりやるべきです。何よりも成長がこの20年間止まっていることが最大の問題だという認識が必要です。現在の名目GDPは約475兆円ですが、この数字は1991年とほぼ同じです。この20年間、まったく日本経済は成長していないのです。米国並みに年率3%程度ででも成長していれば、おそらく、消費税上げの必要もなかったでしょうし、先ほど触れた対名目GDP比で200%を超える政府債務残高も半分程度で済んだと考えられます。

 つまり、経済が成長していれば、解決していた問題がたくさんあるのです。わが国日本は、残念ながらこの先も高齢化率がどんどん上がっていきます。それにともない社会保障負担も毎年1兆円程度の増額が必要となります。つまり、10年後には今よりも10兆円余計に財源が必要となるわけです。これを賄うためには、消費税率を17%程度まで上げる必要があると言われています。それでも財政は悪化し続けるのです。

 この問題を解決するためには、国の収入を増やす必要がありますが、増税だけでは当然経済が疲弊するだけです。産業政策を強化して、「国内で」稼げる産業を育成することが大切なのです。宇宙・航空、精密機械、自動車、新幹線、ソフトウエア、アニメ・・・国際的に勝てる産業はたくさんあります。農業も集約化してコストダウンを図れば、米などの製品は国際的に高く評価されているので競争力は十分にあります。これらの産業を伸ばす政策を積極的に推し進めるのです。風力や地熱発電などを国内で推進し、その技術で強力な輸出産業に育てられれば脱原発にも一石二鳥です。

 いずれにしても長所を伸ばす産業政策を進めることが大切ですが、その責任者は経済産業大臣です。しかし、野田内閣発足時の経済産業大臣は「放射能をつけてやろうか」と記者団に発言して大ひんしゅくを買い、9日で首になってしまいました。次の選挙では産業政策に重点を置いてくれるような政党が選ばれることを経済人の一人として心より希望しています。