消費増税9か月後が心配~前回増税時には2つのラッキーがあった

2019.10.08発行 Vol.352
10月1日に消費税率が2%上がり、10%となりました。
今回は、キャッシュレス決済での還元やプレミアム付き商品券などの景気対策がなされるので、当面は3%増税された2014年4月ほどのマイナスのインパクトはないと考えられます。
ポイント還元は中小企業だけですが、大企業も対抗上キャンペーンを行うところが少なからずあるので、景気にはその分プラスに働くでしょう。
しかし、前回増税時には支出面での名目GDPの5割強を支える家計の支出が落ち込んだにもかかわらず、全体的には日本経済は拡大を続けました。
つまり、前回は消費増税を乗り越えながら、戦後最長の景気拡大が続いたのです。それには、「2つのラッキー」があったからだと私は考えています。
しかし、今回はその「ラッキー」は残念ながらないと考えています。

一つは、企業業績です。
2013年4月に始まった日銀の「異次元緩和」の効果による円安や株高もあり、企業業績が安定的に拡大していました。
財務省が発表する法人企業統計を見ると、前回増税時以降も、企業の設備投資、営業利益が増加しました。
もうひとつはインバウンド消費です。インバウンド消費は、当然家計の支出には入りませんが消費支出を支えていたのです。
最近では4兆円を超える規模となっています。その中で、2015年の全国百貨店売上高の伸び率は家計の支出や小売業販売額よりも高くなりました。
この年は、中国人観光客による高級品の「爆買い」のピークで、百貨店で宝飾品や高級時計が飛ぶように売れた時期だったのです。
前回の増税時には景気を支えた企業業績でしたが、現状は、米中摩擦や世界的な景気減速懸念があり、企業業績は落ち気味で今後も停滞が続く可能性があります。
先に示した法人企業統計では、直近の調査の4-6月は久しぶりに、設備投資、営業利益ともにマイナスとなっています。1日に発表された日銀短観も大企業製造業は落ち込みました。
来年の米大統領選挙もあり、トランプ大統領が「アメリカファースト」の姿勢を崩さないことから、米中摩擦は解決がなかなか見えづらく、中国経済も元気がありません。また、欧州経済の機関車であるドイツも4-6月の成長率はマイナスとなりました。
そうしたことから、日本企業、とくに中国への依存度の大きい企業などは、業績の低迷が予想されます。
また、企業業績や日本経済を長年支えていた日銀の政策にも限界が見えています。
インバウンド消費も、中国国内での転売(いわゆる代理購入)に今年1月から課税されることとなったため、一部の化粧品会社やドラッグストアに影響が出ています。また、人民元安もインバウンド消費の足を引っ張っています。

2020年には東京オリンピック・パラリンピックがあり、その分、訪日客やインバウンド消費の増加が見込まれますが、期間が限られる上に、そのインパクトは現状の日本経済の規模を考えるとそれほど大きくないと考えられます。GDPの計算方法が変わっているので単純な比較はできませんが、1964年の東京オリンピック当時に比べて、現在の日本の経済規模は約18倍に成長しています。
ひとつのイベントでの効果は限られているわけです。
今後の景気、とくに消費の動きとともに、ポイント還元などの景気刺激策が終わる9か月後からの経済の動きを注意して見る必要があります。

【小宮 一慶】
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