法人税の不平等感を解消すべし

2013.09.24発行 Vol.207
 消費税率の3%上げが実質上決まり、景気の下押し圧力に対応するために、政府は法人税率の下げなどの景気対策を考えています。今回のメルマガでは法人税について考えてみたいと思います。

 政府は、消費税を上げることによる景気腰折れに対応するため、賃上げを行う企業に、賃金を上げた分の1割を税金で戻す(税額控除する)ことを検討していますが、おそらく機能しないでしょう。理由は以下の通りです。

 まず、税制によって賃金が上げやすくなる可能性は否定しませんが、あくまでも企業業績が良くなることが前提です。景気が良くなって、労働市場の需給が改善すれば、自然に賃金は上がります。事実、介護業界などでは採用が結構厳しくなりつつあります。さらには、賃金を一度上げてしまうと、賃上げ額とともに企業負担の社会保険料や、退職金、退職年金の負担がその後、永久に増える可能性があります。それを時限立法でしばらくの間、少し税金を控除するというのでは、企業は二の足を踏みます。

 一番大きな問題は、法人税を支払っていない企業が7割を超えるということです。税を戻しようがない企業がほとんどの中で賃上げ企業に減税と言っても、7割以上の企業には関係がないのです。

 根本的な問題は7割もの企業が、法人税を支払っていない、つまり、税法上は赤字(課税所得がマイナス)という現実です。常識的に考えて、赤字続きでは会社は継続できませんが、少し経営を知っている人なら、からくりは分かるはずです。

 減価償却費(設備の価値の目減り分)など、お金が出て行かない費用があり、それが税法上損金となるからです。企業はお金が無くなったときに倒産しますが、税法上赤字でも、キャッシュフローはプラスになる仕組みがあるからです。こちらはキャッシュフローと関係ありませんが、税務上赤字にするために、経営者だけがたくさん給料を取ることもありうることです。

 いずれにしても、法人税は企業の社会への参加費ですから、それを支払っていない企業に払わせるために課税ベースを広げることが大切だと私は考えます。たとえば売上高の1%程度を「法人売上税」というかたちで課税すればいいのです。もちろん、そうなると、現状、きちんと法人税を支払っている企業には負担増となりますが、既存の法人税からその法人売上税額を控除すれば、きちんと法人税を支払っている企業には影響が全くありません。

 むしろ課税ベースを広げたことで増えた税収の一部を、法人税率引き下げに使えば、本当に頑張っている企業に報いることができます。トップランナーをより走りやすくすることも、産業の空洞化を防ぎ、経済活性化には大切です。

 こういう話を書くと、儲けられない企業はどうすればよいのかという話が出ますが、もっと頑張るか、さもなければ撤退すればよいと思います。松下幸之助さんもおっしゃっていますが「赤字は罪悪」という認識が必要です。社会から「ヒト、モノ、カネ」を預かって、適正な利潤を出せないのなら経営者など不要です。そのような企業の経営者の給与こそムダなコストですし、赤字続きなら、経営者が心を入れ替えて命がけで経営するか、ヒト、モノ、カネを社会に還元したほうが社会のためになります。

 そのためにも、トップランナーがより走りやすい社会を作って、優良企業がより多くの人を雇える環境を整備すべきです。ダメで甘やかされた企業ばかりでは、社会も社会保障も支えられません。経営コンサルタントとして多くの企業を見ていてつくづくそう思います。ダメな企業も社会の一員という考え方もありますが、「弱者」と「怠慢者」をきちんと区分けすべきです。弱者は社会として徹底的に守らなければなりませんが、怠慢者を保護することは社会をダメにします。練習もせずにゴルフ場に出て、スコアが悪いと嘆く人には、「もっと練習しなさい」と忠告するでしょう。同様に、経営も経営者が経営をよく勉強し、必死でやればうまくいくことが多いのです。

 一時的な業績の変化で法人税を支払えないのならそれには同情の余地もありますが、継続的に法人税も支払わず、うそぶいている企業やその経営者には辟易します。そのような企業が早く撤退し、本当に頑張っている優良企業に資源が集中するためにも、法人売上税を含めた法人税の課税ベース拡大と法人税率の引き下げを希望したいものです。