有難い

2011.10.25発行 Vol.161
 私事で恐縮ですが、2006年10月16日は私にとっては忘れられない日です。小さな腫瘍が見つかり、右肺の3分の1を切除する手術をした日なのです。おかげさまで無事5年経ち、ドクターからも完治したと言われました。

 手術自体は思っていたよりもずっと楽でした。胸腔鏡手術という、胸の脇に小さな穴を3つ開けてやる手術で、手術から1週間後の10月23日には、午前中に大阪で役員をしている会社の取締役会に出た後、毎日放送「ちちんぷいぷい」の生放送に4時間出演しました。隣に座っていた元阪神タイガースの掛布さんも驚いていましたが、手術は本当に身体の負担が少なく、自分でも驚くくらいのものでした。

 腫瘍は人間ドックのCT検査で見つかったもので、あれ以来、多くの人に「早期発見、早期治療」の重要さをお伝えしています。もし、あのときに腫瘍が発見されずに、しばらく放置していたら、肺がんは致死率の高い病気ですから、今私はこうしてこのメルマガを書いていなかったかもしれません。発見が遅れていたら、少なくとももっと長い治療期間を要していたことは間違いないでしょう。私の場合、早期で発見されたため、手術以外には放射線や抗がん剤での治療もなく、本当に手術と1週間ほどの入院だけだったのです。

 いつのころからか忘れましたが、私は「有難い」という字を書くときには、このように漢字で書くようになりました。「有ることが難しい」という意味を表現したいからです。健康なこと、お客さまがいらっしゃって仕事があること、働く仲間がいること、家族と暮らしていること、友人がいること、全ては本来「有難い」ことなのです。これを「当然」、「当たり前」と思っていては、感謝の気持ちや、毎日を大切に過ごそうという気持ちにはなりにくいのです。

 私の性格からすれば、もし、あのとき肺がんで死んでいたとしても、おそらくある程度満足して死ねたと思います。しかし、生きていることで新たに知ったこと、得たことがあるのも間違いありませんし、人生の満足度も高まったと思います。生き方も少し変わったかもしれません。

 この5年間で40冊ほどの本を出しました。講演や研修も1000回前後は行ったと思います。多くの場所にも行けました。そこで多くの新しい出会いがあり、人生が開けた面も少なくありません。もちろん、生きていく上での苦しみや悲しみもなくはありませんが、生きていて良かったほうが大きいのです。

 そうした状況で、関わる方たちを見ていると、もったいないと思う人も少なくありません。私は自己実現とは「なれる最高の自分になる」ことだと思っていますが、現状から脱却しない、与えられた機会を十分に活かさない人たちが少なくないからです。この春に大変不幸な大震災が東日本を襲いましたが、震災だけでなく、本当に生きていること自体、「有難い」と感じるかどうかで、人生が変わるような気もします。

 今から5年後にも、今日と同じメルマガの内容の文章が書ければうれしいなと思っています。