最高の本物を見るということ

2019.07.09発行 Vol.346
私の趣味の一つは絵を見ることです。そのため、年に何度かは美術館を訪れます。地方や海外への出張も多いので、そんな時にも時間があれば美術館を訪ねます。

美術館を訪ねる理由はいくつかありますが、ひとつは、美しい絵などに触れることにより、美的感覚を磨くことができるからです。「直感的に」美しいと感じる能力です。ITの発達で自分が接することのできるデータ量が過去に比べて膨大となる中、論理の組み立てだけでは結論を導き出すのが難しい場合も少なくありません。そうした場合に役立つのは直観力ですが、美的感覚を磨くことで「真善美」に対する直観力を鍛えることができるのではないでしょうか。もちろん、絵が描かれた背景や、画家それぞれの個性や心理状態を知ることもとても興味深く、想像力が掻き立てられるのも、美術館を訪問する大きな理由です。

もうひとつの美術館を訪れる大きな理由は、世界で一流や最高といわれる絵を見ることができることです。「世界最高のもの」というのは主観的ですが、それでも多くの人が「素晴らしい」というものについて、それに触れ、その水準を知ることはとても大切なことだと思っています。最高水準を知ることによって、自分に基準ができるからです。
これは、絵の世界だけでなく、仕事の場でも同じです。私の仕事は経営コンサルタントですが、やはり、経営コンサルタントの元祖であるピーター・ドラッカーや経営者として大成功された、例えば、松下幸之助さんや稲盛和夫さんのものの考え方を知り、しっかりと理解することが大切だと常々思っています。

どんな仕事でもそうですが、ある程度のレベルがあればやれます。ましてや世界最高水準など知らなくてもやれることは少なくないと思います。とくに、一流を相手にしなければ、適当な水準でもなんとか仕事はこなせます。しかし、私はそれではだめだと思うのです。自分でなれるかなれないかは別として、世の中で求められている最高水準はどんなものかを知るということが大切なのではないでしょうか。それに触れることで、自分の自覚が高まり、自分のレベルの低さを知り、さらなる向上がないとプロとして、一流としてやっていけないと知ることが大切なのではないでしょうか。
もちろん、先ほども書いたように、世界最高水準でなくても多くの仕事はやっていけます。しかし、最高水準の本物を知ったうえで、自分のレベルがどうなのかということを知り、「なれる最高の自分」を目指すということが大切なのではないでしょうか。

余談ですが、私のお気に入りの美術館は箱根仙石原にあるポーラ美術館です。7月28日までと期日が迫っていますが、今は、ポーラ美術館とともに素晴らしい印象派の絵を多く持っているひろしま美術館との共催展をやっています。素晴らしい本物をご覧いただけると思います。(8月10日からは、同じ企画をひろしま美術館でも行うそうです。)

【小宮 一慶】
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