最長の安倍政権の経済政策を振り返る

2019.11.26発行 Vol.355
安部首相の在任期間が歴代一位となったことが話題となっています。今回のメルマガでは、その期間の経済政策を振り返ってみたいと思います。
第二次安部内閣が発足したのは、2012年12月でした。それまでは2009年から民主党政権で、2008年のリーマンショックやそれに続く世界同時不況、2011年の東日本大震災を経験し、日本経済は結構大変な時期でした。
安部首相の経済政策の特徴の第一は、なんといっても「アベノミクス」です。最初は関西あたりでは「阿倍野のミックスジュース」などと揶揄されたことはありましたが、疲弊した日本経済の立て直しに一定の効果を示しました。(副作用も大きいのですがこれは後述します。)
アベノミクスは当初、1.大規模な金融緩和、2.機動的な財政支出、3.成長戦略を「三本の矢」としてスタートしました。その中でも、2013年4月から始まった「異次元緩和」は、金融専門家をも含めて、予想を大きく超える内容でした。マネタリーベース(日銀券+日銀当座預金)の残高を2年で倍にするというものです。つまりは、お金をじゃぶじゃぶにつけるというものです。それにより、民主党政権時代は70円台まで進んだ異常な円高が是正され、株価も上昇、企業業績、とくにグローバル企業の業績が拡大するという効果がありました。また、デフレに苦しんでいた消費者物価も一時は1%近くまで上昇しました。
アベノミクス、とくに異次元緩和は景気の反転に貢献し、現状は戦後最長と言われる景気拡大を記録しています。しかし、弊害や問題点は小さくありません。異次元緩和は所詮「カンフル剤」です。黒田日銀総裁も、異次元緩和が機能していた当初2年間ほどは「早く成長戦略にバトンタッチしたい」旨を発言していましたが、本当にこの国に長期的成長をもたらす成長戦略はほとんどと言っていいくらい何も出てきませんでした。成長戦略には、規制緩和など、痛みを伴うものも少なくありませんが、先送りしたのです。
その間に、異次元緩和だけは進み、開始当初135兆円だったマネタリーベースは、2年後には当初目標の倍の270兆円となり、現状は500兆円を超えていますが、効果はなくなりました。今では銀行の体力を大きくそぎ、かつ、勤勉にコツコツ貯めた人から金利を奪うという弊害だけが続いています。そして、「異次元」だけが残り、日銀が多大なリスクを負っているのですが、多くの国民がこの事実に気づいていないのも恐ろしいことです。
そして、さらに問題なのは、バラマキが続き、財政がどんどん肥大化、悪化していることです。「桜を見る会」の入場券のバラマキよりもっとひどいのです。今年度予算約102兆円、来年度予算は105兆円程度の予定ですが、そのうち税収で賄えているのは、約60兆円にしか過ぎません。残りは財政赤字です。その財政赤字の残高が名目GDPの200%を超えるという先進国で最悪の状況です。それらは私たちの子供や孫にツケ回しされます。
日本は、高齢化がまだまだ進み、人口が減少しています。今後、10年以上医療費などの社会保障費が急増することはこのままでは間違いありません。それを乗り切る方策もありません。長期政権であればこそ、この先の危機を乗り切る長期の戦略の策定ができたのではないかと思いますが、残念です。目先のことだけを考えていると、うまくいかなくなるのは企業戦略も同じですね。
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