景気指標から現状の経済状況を分析する

2010.10.12発行 Vol.136
 日経新聞の月曜日の「景気指標」欄を見ることは私にとって趣味のようなもので、毎週けっこう丹念にその数字を読んでいます。今では、趣味というよりも雑誌や本で景気指標を使った経済分析を行っているので、仕事の一部になっているとも言えます。

 最近の景気指標を見ていると、景気が停滞期に入っているのが分かります。下手をすれば、すでに後退期に入っている可能性も伺えます。

 まず、GDPです。GDPは各企業の付加価値の合計ですが、その6割程度は人件費で分配されるため、給与の源泉です。実額である名目GDPの伸びがデフレ下では重要ですが、直近の4-6月では年率マイナス2.5%となり、再びマイナスとなりました。

 給与の源泉が下がっているわけですから、今後の給与の伸びが抑えられる可能性があります。実は現金給与総額の数字を見ると、ここ3年で合計5%程度下落していたものが、今年の3月からは前年比でほぼ1%程度の上昇に転じ、それが7月くらいまで続いていました。しかし、8月の速報値は前年比ゼロという状況です。5%下がって1%戻していたのが、その戻りすらなくなりつつあるので、この先の消費支出の動向も心配です。日本の場合、GDPの6割弱を支えているのが家計の支出だからです。給与が伸びない中で、支出が増える確率は低く、また、エコカー補助金が9月上旬で切れました。新車販売台数は即座に反応し、9月は前年比割れとなりました。10月以降は、新車販売はさらに悪化することも懸念されます。

 鉱工業生産指数を見ても停滞感は明らかです。この数字は2005年を100として鉱工業の生産の状況を指数化したものですが、6月以降の3ヶ月間は前月比でマイナスの状態となっています。2009年の2月に70を割るところまで落ちた生産指数も、その後順調に回復し、今年の春先には96にまで戻ったのですが、ここにきて95を割る状態に逆戻りしています。

 同様に在庫率指数も、09年2月に158まで悪化していたものが、この春には100近くまで在庫調整が進みましたが、このところ再び増加に転じ、107まで逆戻りしており、在庫が少し増えている状況です。

 GDPは付加価値の合計で給与の源泉だと言いましたが、それを消費の面から支える要素は、民間の消費、民間の投資、政府の支出、それに、少し難しいですが、純輸出(貿易収支の黒字分)ということになります。民間消費の大半を占める家計の支出は現状伸び悩んでいます。企業の設備投資も、法人企業統計を見る限りは、まだ前年比マイナスを続けています。政府の支出である公共工事請負金額を見ても、これも前年比マイナスの状況です。

 頼みの綱は純輸出で、夏前までは輸出の回復もあり唯一景気を牽引していました。春先から夏前にかけては、少ない月でも3千億円程度、多い月では9千億円を超える貿易黒字を稼いでいました。それが、8月には1千億円以下にまで落ちています。現状の円高を考えると、輸出の後退が懸念されます。この円高に関しては、先週末にワシントンでG7サミットが開かれました。日本政府(野田大臣)の記者会見では、通貨安競争は良くないと共通の合意があったと報道されていますが、CNNを見ていると、何も実質的なことは決まらなかったと報道していました。当面はこの水準の円高が続きそうです。そうすると、民間消費、投資がふるわない中、景気を牽引する要素が政府支出しかなくなります。

 管内閣は補正予算の執行を早めようとしています。この状況では早急に補正予算を成立させ執行することが望ましいと考えますが、膨大な財政赤字を抱える中、フリーハンド(自由度)がどんどん狭まっていくのも心配です。