景気の二番底割れはなさそうだが、安心は禁物

2010.03.09発行 Vol.122
今週月曜日の日経新聞の景気指標を見ても、外需産業の回復にともなって内需産業もわずかですが明るさが見えてきました。昨日大阪で出演した毎日放送「ちちんぷいぷい」でもこの話題が取り上げられていました。しかし、安心は二つの意味で禁物だと思っています。
まず、具体的に景気指標の数字を見ていきましょう。2005年を100としてみた「鉱工業指数」の「生産指数」は昨年09年2月に69.5の非常に深い底を打った後、徐々にですが回復し、直近の今年1月では91.9まで回復しています。前年同月比でもプラス18.2ポイントです。(ただし、「製品在庫率指数」は108.9のままで、このところ改善は足踏みです。)
さらに半導体の状況を表す「生産指数集積回路」は今年1月には前年比プラス89.3%と急回復、「粗鋼生産高」も月産870万トンに回復しており、年産1億トンの損益分岐点を超える水準となっています。数字の連続で恐縮ですが、もう少しマクロ的に見れば「貿易・通関」の数字は、2008年度には7千億円の貿易赤字となっていたのが、このところ多い月では8千億円程度の黒字となっており、貿易黒字が復活しています。また、輸出の絶対額も1月の数字で前年比プラス40.8%とこちらも急回復しています。輸出の絶対額が増加しているということは、輸出産業の稼働率が上がっているということになります。そのことは、輸出産業に関わる内需産業、たとえば機械や部品を納入している会社や、設備のメンテナンスや建物を提供している会社の業績にも好影響を及ぼします。
次に、内需関連の数字を見てみましょう。まず、「小売業販売額」が今年1月に長いトンネルを抜けて前年比プラス2.6%に転じました。また、「建設工事受注」も昨年央には前年比40%を超えるマイナスを記録しましたが、今年に入ってからは前年比プラスになっています。
雇用も「現金給与総額」が1月にやっとプラスに転じたあと、「所定外労働時間」も約2年ぶりにプラスに転じました。失業率も4.9%とまだ高い水準にあるものの、5%を割り込む水準となりました。企業倒産件数も前年比でマイナス20%近くで推移しています。
このように、景気指標を見る限りでは、深い底を打った後、輸出産業中心の回復により、わずかですが、内需関連にも波及してきたと言えます。日本経済の大底は昨年の2月で、そこから1年して雇用や内需に少し明るさが見えてきたということが言えるでしょう。
冒頭で、「安心は二つの意味で禁物」と書きましたが、ひとつは、財政赤字が先進国中最悪で、もうすぐ名目GDPの200%にも達しようかという勢いとなっていることです。増税を行わざるを得ないでしょうし、このまま放置すると長期金利の予想外の上昇となる可能性があります。金利が上がると、利払いのためにさらに財政赤字が膨らむという悪循環となるため、いずれにしても財政や増税についての議論が再燃することは必至です。
もうひとつの私の懸念は、こちらの懸念のほうが大きいのですが、景気回復に安心してしまうということです。のど元過ぎればということもありますが、企業経営も国家運営もこの先も何が起こるかは分からないので、今後もさらに気を引き締めていかなければならないと思います。