日銀はマイナス金利幅を大きくするか

2016.04.26発行 Vol.269
 熊本、大分では大変な地震が起こりました。私も熊本には長年の顧問先さんがあり、また後継ゼミ卒業生やコンサルタント養成講座卒業生など親しいお客さまがおられるので大変心配をしています。いまだに余震が続いているようですが、早期に生活が元に戻ることを心よりお祈りしています。

 さて、今月27日、28日に日銀の政策決定会合があります。2月16日から金融機関が日銀に預ける日銀当座預金に対し-0.1%の金利を取っているのですが、私は今回の政策決定会合で、マイナス金利幅を大きくするのではないかと考えています。

 第一の理由は、効果が十分に出ていないことです。2月16日以降、日銀当座預金残高を注視してきましたが、260兆円程度だったものが、最近では280兆円を超えています。日銀は金融機関から主に国債を購入することで月に7兆円程度の資金を供給し続けていますが、そのほぼ全額が、マイナス金利にも関わらず、日銀当座預金に滞留している計算になります。銀行の貸出しの伸び率も以前と変わらないといった状況です。

 もちろん、市中金利は低下し、国債利回りもマイナスの状況で、一部の企業では非常に低利で社債を発行するなどしていますが、中国経済の状況始め、景気の先行きに不安がある中、企業の設備投資意欲は全般的にはそれほど高くなく、金利低下のメリットを享受している企業や人はそれほど多くありません。また、インフレ率もほぼゼロの状況がここ1年続いています。その中で、マイナス金利は金融機関の収益を圧迫し始めています。年金も運用に苦慮しています。マイナス幅を拡大することは、金融機関や年金にはさらなるダメージになりますが、貸出し増などの効果が出ないことには、このままでは単に経済に悪影響を与えただけで終わってしまいます。そういった意味からも、効果が出るまで、それも早く効果を出すためには、マイナス幅を大きくすると私は考えているわけです。

 もうひとつの理由は、5月末に行われるサミットです。5月中旬には1-3月のGDPが発表になりますが、このままでは昨年10-12月に続いてマイナス成長となる可能性が高いと考えられます。次回の日銀の政策決定会合はサミット後となりますから、ここでマイナス金利幅を大きくして、株高、円安に持っていきたいと政権側は考えているでしょう。日銀内部には、現在のマイナス金利政策に関してもう少し見極めの時間が必要との意見も根強いようですが、効果が十分でない上に、サミットを乗り越え、7月の参院選に対応するためにも、政権側の意向をくんで、日銀はマイナス幅を拡大しようとするのではないかと私は考えています。市場もそのことを予想し、このところ少し円安、株高に振れています。

 いずれにしても、今月末でないにしても、このままでは、どこかの時点でマイナス幅の拡大が行われざるを得ないでしょう。これは、金融市場、ひいては日本経済をとてもいびつにしているという認識が必要です。マイナス金利政策(正確には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」)の出口も見えない状況です。

 安倍首相は2020年までに現在約500兆円の名目GDPを600兆円にすると言っていますが、90年代前半と同じ規模のGDPから20年以上抜け出せないでいる日本経済を考えれば、金融政策、それもマイナス金利のような非常にリスクの高いものではなく、本物の成長戦略を早く出し、それを実行していかなければならないことは明らかです。中長期的な経済成長以外に出口はないのです。


【小宮 一慶】