日銀の量的緩和第2弾に思う

2014.11.11発行 Vol.234
 先ごろ、日銀の黒田総裁が量的緩和第2弾を発表し、株価が急騰するとともに円安に一気に触れました。株価が上がることは日本経済にとって良いことですが、やはり企業業績、それも「国内での」企業業績が上がり、賃金が上昇することが何よりも大切だという認識が必要です。

 今回の株高や円安はどこまで続くかは私も十分には予測できません。昨年4月の「異次元緩和」とまで言われた量的緩和で、その後ひと月半ほどの間でしたが、株価が大きく上昇したので、その経験から、投資家たちがその上昇分を今回は先取りしたとも読めます。

 政府としては、量的緩和により銀行が企業への貸出しを増やし、それにより設備投資などが増え、「国内での」企業業績が向上し、それが賃金に反映して、GDPの55%強を支える家計の支出が増加することを形式的には期待しているのですが、昨年の異次元緩和でもそれは十分には起こりませんでした。本音のところで願っているのは、株価上昇により、資産家が消費を増やし、それにより企業の生産や業績が向上することを願っていると思います。しかし、これも消費増税前の駆け込み需要でかなりの分を先食いしているので、それほど期待はできません。いずれにしても、株価を上昇させておけば、消費税率上げやひょっとしてあるかもしれない総選挙に不利に働くことはないとの思惑から、とにかく株価を上げる戦略をとり、それに日銀や年金機構(GPIF)が援護射撃をしているとも推測できます。

 しかし、量的緩和は所詮カンフル剤で、ここまでやると副作用も小さくありません。量的緩和第2弾を決めた日銀の政策決定会合では、委員の5人が賛成したのに対して反対が4人だったことからもそのリスクは明らかです。単に株価が上がることに反対する委員はだれもいないはずだからです。

 結局は、国民の給与が上がることが大切ですが、現金給与総額の指標を見る限りは今のところ前年比で1%程度にとどまっています。消費税上げの影響もあり、消費者物価は3%程度上昇していますから、実質的には収入減という状態です。先ほども述べたように家計の支出が伸びないと経済は安定して成長しません。

 円安を歓迎する声もあります。確かに円安は輸出を伸ばしやすい面がありますが、実際は、輸出はそれほど伸びていません。今のところ、円安の恩恵を最も受けているのは、「グローバル企業」です。海外での業績が円換算で良くなるのです。この場合、日本国内の株主には少しメリットがありますが、グローバル企業で国内で働く人の賃金が上がるかは不明です。自動車業界でも海外生産の多い会社では、海外業績は良いのですが、国内での業績は今一つの会社も少なくありません。そういった会社が「国内での」賃金を上げることは、国内での競争力をさらに落とすことともなりかねず、国内賃金の上げには二の足を踏んでいるのが現状です。また、円安は輸入物価を押し上げるので、中小企業などで素材を多く使うところの業績を圧迫しています。

 いずれにしても、国内産業を伸ばすような本当の意味での「成長戦略」が必要ですが、こちらは、なかなか出てこないのがとても残念です。また、2度目の消費税率上げはとても判断の難しいところですが、もうすぐ発表される7-9月のGDPをはじめ、今後しばらくの間は景気指標の動きからは目が離せないところです。