日銀の『異次元緩和』第3弾に注目

2016.01.26発行 Vol.263
 年初から株式市場や為替市場が動揺しています。日経平均は一時3000円程度下落し、円高も進みました。先週末には大きく戻しましたが、今後も動揺が続くと思われます。市場が動揺した背景には、まず、世界経済がここ10年程度の大きなトレンドの転換点を迎えていることがあげられます。

 一つは中国経済です。2000年くらいからリーマンショック直後まで10%程度の成長を続けてきた中国経済ですが、その減速が、日本やアジアの国々、そして資源国の経済などに大きな影響をこの先も与える可能性があります。以前の中国経済なら、その減速がそれほど大きな影響はなかったでしょうが、現状名目GDPで10兆ドル程度、世界第2位の経済大国となった中国経済の減速は、世界経済に大きな影響を与えます。世界全体の名目GDPは約75兆ドル、米国が約17兆ドル、日本が4兆ドル強です。以前1兆ドルもなかった中国経済が減速するのとはそのインパクトが違うわけです。今後も、生産年齢人口の減少や賃金の上昇で減速傾向が続くでしょう。

 もうひとつの転換点は米国の利上げです。2007年のサブプライム危機以降、主要国の中央銀行は、金利をゼロ近辺まで低下させるとともに、市中にジャブジャブに資金を供給する「量的緩和」を続けてきました。ここ数年、米国経済が比較的堅調となってきたことから、米国の中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)は、2014年10月に量的緩和の拡大停止、さらには昨年12月に政策金利の上昇を決定しました。これはこれまでの政策の大きな転換で、先を見越した投資家が、不安定な新興国から安全でこの先さらに金利が上がる可能性の高い米国債に資金を移動し始めました。このことが新興国の通貨や経済に大きな影響を与えています。

 このような、大きなトレンドの変化がある中で、年初に、中国の製造業担当者に景況感を聞くPMIという指数が、予想よりかなり悪い数字で発表され、上海株が売られました。「サーキットブレーカー」という市場システム導入も波乱に拍車をかけました。また、年初にサウジアラビアとイランとの関係が危機的状況となり、さらには原油価格が大幅下落し、そのことが産油国経済やシェールオイルを多く産出する米国のエネルギー産業への懸念を生み、さらに株価を動揺させています。中国経済の減速も原油価格の下落に影響しています。また、オイルマネーの市場からの減少懸念がさらに株価を下落させるという、不確定要因がとても多い状況で、当面は市場が大きく動きやすい状況です。

 これを踏まえ、ECB(欧州中央銀行)総裁が量的緩和を示唆した発言をしましたが、株価のみならず日本経済の先行き不安も台頭する中、日銀の「異次元緩和」第3弾にも期待が寄せられています。早ければ今週28日からの政策決定会合で緩和が発表されますが、日銀にとっては諸刃の剣です。2度の緩和で、主に国債を買い上げることで、年間80兆円程度のマネタリーベース(日銀券と日銀当座預金残高の合計)を供給していますが、市中の国債が枯渇するほどに買い上げています。緩和効果にも限界があり、また、リスクの大きな政策ですから、前回、2014年10月の緩和時には、9人の政策審議委員のうち4人が反対する中での異例の決議が行われました。今回は、それよりもさらに効果に疑問があります。

 そして、大きな懸念材料は、もし、本当に効果的な政策が発表されなければ、逆に市場は大きく失望することとなります。ただし、逆に、こういうものが本当にあるのかどうかは不明ですが、効果的な緩和策が発表されれば、それだけ多くカンフル剤を打つわけですから、対応を誤ると、のちに大きなパニックを引き起こすことにもなりかねません。

 選挙を控えていることも考えれば、政府としては株価対策として、異次元緩和第3弾に期待したいところでしょうが、新たな緩和策は、その内容次第では短期的にも中長期的にも大きなリスクを持っているという認識が必要です。

【小宮 一慶】