日本経済と『治に居て乱を忘れず』

2018.07.24発行 Vol.323
最近、当社のセミナー会員さん向けに講演するときには「治に居て乱を忘れず」ということをお話します。現状の経済状態を前提として経営計画を立てないほうがいいということです。皆さんはご存知かもしれませんが、日本経済は戦後2番目の長さの拡大中で、このまま拡大が続けば、来年1月には戦後最長の景気拡大となります。ちなみに、これまでの戦後最長の拡大は、2002年から2007年にかけてでした。今は、普段より良い状況だという認識が必要で、これがずっと続くと考えないほうがいいと私は思っているのです。

2020年の東京オリンピックまでは景気は大丈夫と考えている人もいるようですが、毎年6兆円程度の公共事業費を使っている中で、せいぜい2兆円程度のお金を、それも数年間に分けて使うわけですから、それほどの経済効果は期待できません。もちろん、東京の一部の開発は進みますが、その経済効果が地方に波及するわけではありません。私たちの世代は1964年の東京オリンピック時を思い起こすかもしれませんが、当時の日本の国内総生産は今の17分の1程度で、そういうときに東海道新幹線、東名・名神高速道路、首都高などを建設したのですから、大きな経済効果がありました。今は、当時とは経済規模が格段に違うのです。

少し、短期的な景気指標を見てみましょう。経済全体の動きを表す国内総生産は、今年の1-3月はマイナスです。1月の寒波が影響しており一時的との見方が大勢ですが、油断はできません。通常は2四半期連続で実質国内総生産がマイナスとなると景気後退と考えられますが、8月10日頃に発表予定の4-6月の国内総生産の数字に注目です。そして、7月は大変な豪雨災害もあり、またその後「酷暑」が続いているので、こちらも経済に少なからぬ影響を与えていると考えられます。
米国経済は比較的好調ですが、中国経済は米中貿易摩擦の影響もあり、減速懸念がささやかれています。欧州も少し成長スピードが鈍化しています。短期的にも日本経済の状況に注意が必要なわけです。

一方、長期的には、国内では少子高齢化が進んでいます。現状の高齢化率は28%程度ですが、今後さらに高齢化率は上がり続けます。今は、高齢社会のほんの入り口に過ぎないという認識が必要で、このままでは社会保障費がさらに増え、地方を中心とした過疎化がさらに進むのです。また、現状でも1000兆円を超えている政府の財政赤字も残高がさらに増加することは避けられません。それを減りつつある若年層が負担するわけです。このままでは、日本経済の将来は決して明るいものではありません。
そして「治に居て乱を忘れず」ですが、企業経営だけでなく、私たちひとりひとりの経済状態も健康状態も、良い状態が少し続くと油断してしまうので、良い時も悪い時もあるということを常に認識して将来に備えておかなければなりませんね。

【小宮 一慶】