既得権益を人は手放さない

2011.11.08発行 Vol.162
 年金問題に関連して、公務員共済と民間企業の従業員が加入する厚生年金を一本化させるという議論が、自民党政権時代から続けられ、民主党政権もそれを掲げていますが、今回もその議論は先送りとなってしまいました。

 国民の税金から給与が支払われている公務員のほうが、税金を支払っている私たちより高い年金を受け取れるということ自体、あり得ないし、あってはいけない話だと思っている人は少なくないでしょう。

 公務員側の理論としては、自分たちも給料から年金の掛け金を支払っているというかもしれませんが、年金の掛け金は労使折半のはずで、雇い主である国や自治体が支払っている原資はもちろん税金です。さらには、公務員のほうが、給与平均が民間より高いので、年金も高くて当然と公務員はいうかもしれませんが、これこそ言語道断で、公務員の給与は、本来、中小企業も含めた加重平均よりも低くてしかるべきです。

 そうすると、優秀な人材が集まらないという話が持ち出されますが、一部の仕事を除いて、それほど優秀な人材が必要な仕事などしているようにはとても思えません。まして、民間より優秀な人材を、役所が大量に集める意味などどこにあるのでしょうか。

 対名目GDP比で見た場合、ギリシャやイタリアよりも格段に財政事情が悪い日本の公務員は既得権益を手放そうとはしないのです。日本人はギリシャやイタリアで起こっているストライキなどを見て、「なんで彼らは自分のことしか考えないのか」といぶかっていますが、実は国内でも同じ事が起こっているのです。

 TPP交渉に参加するかどうかということで、国会でも大議論となっていますが、こちらも既得権益を脅かされたくない勢力が猛反発をしています。お隣韓国でも、米国とのFTA(自由貿易協定)締結をめぐって、反対勢力が李大統領に大きなプレッシャーをかけています。

 私は、原則的にはTPP交渉には参加すべきだと考えており、民間部門でも不合理な既得権益はなくさなければならないのは当然です。その分、他の誰かがそれを負担しているからです。しかし、民間人にも既得権益を捨てろというなら、その前に、公務員が既得権益を捨てることを行わなければならないと考えます。そういうこともせず、民間にだけ既得権益を捨てろというのは、おかしな話です。

 さらには、震災復興のための増税議論がなされており、現状では所得税などを25年間上げるという案が有力ですが、安易に国民負担を増やす前に、公務員などの既得権益にメスを入れることをやるべきです。

  民主党政権は、公務員の組合である自治労が大きな支持母体となっているために、本格的な公務員改革を選挙のときだけやるふりをしていますが、国民もいつまでもだまされているわけではありません。もちろん、私は、財政改革には消費税増税も含め早急に着手すべきだと考えますが、野田首相は自分の給与を削減するなどの小手先のパフォーマンスでお茶を濁すのではなく、政府のリーダーとして政府全体の矛盾やムダを徹底的に排除する姿勢を示さなければ、国民は納得しないでしょう。もちろん、私たち自身も既得権益にしがみつく「卑しい」姿勢を改めなければならないことはいうまでもありません。