新国立競技場、JR九州上場問題

2015.08.11発行 Vol.252
 新国立競技場の見積額が2500億円を超えて大きな問題となり、安倍首相は見直し決定をせざるを得なくなったことは、皆さんよくご承知のことだと思います。これくらいのことなら十分に乗り越えられると思っていたものが、安保法制での強引さに支持率が急落したため、それよりも国民の不満が多く、かつ「目立つ」国立競技場建設計画を白紙に戻すことで支持率回復を狙ったということです。

 私がこの問題で思ったことは、この2500億円という金額は非常に大きなものですが、今年度の国家予算の約96兆4千億円と比べると、実は「わずか」0.3%程度しかないということです。額が小さいから、どうでもいいと言っているのではありません。その逆です。0.3%のことでもこれだけずさんなのです。残り99.7%もかなりの確率でずさんなのではないでしょうか。この新国立競技場問題は、マスコミや国民にとってとても「目立つ」問題だったのでこれだけの注目を集めたのです。目立たない他のことは知らずに過ごされてしまっているのではないでしょうか。

 このあまり目立たないけれども、とても大事なことに、JR九州の上場問題があると私は思っています。とてもひどい話がまかり通っているのです。JR九州には、旧国鉄が分割される際に、「経営安定基金」として約3800億円のお金が国会の承認を経て渡されました。そして、このお金は同社の株主資本勘定に計上されています。このお金の運用益で鉄道事業の赤字を埋めるという構造になっています。これはJR九州と同じく、いわゆる「3島会社」と呼ばれる、JR北海道、JR四国も同様の仕組みになっています。直近のJR九州の損益計算書を見ると、鉄道事業では100億円強の赤字ですが、それを基金の運用益で賄っています。(その運用利回りもかなり高いと言えます。)国民のお金を預けて、その運用益で地域の鉄道を守ろうというのは悪い考えではないと思います。

 このたび、JR九州の上場が国会で決まりました。そこで何が起こったかというと、この安定基金をJR九州がもらうことになったのです。もともとは基金を預け、その「運用益」を地域のローカル線を守るために与えていたものを、その元のお金をJR九州がもらうことになったのです。これは、一般企業でいうと、上場するので、既存の株主が入れていたお金をもらうと言っているのと同じです。

 国民から貸し与えられている資金ですから、上場に際しても、それを国民からの(=政府からの)借り入れなどに振り替えるべきでしょう。あるいは返済すべきです。それをもらってしまおうという考えが私にはまったく理解も納得もできません。

 国会や政府には、貸借対照表の考えがありません。国の資産であっても、その年の費用であっても、単年度予算ですから、一度出してしまったものは、それっきりなのです。本来、国民に返されるべき資金が、一民間企業に与えられるなど、論外です。あってはいけないことです。

 JR九州は、そのもらったお金で、九州新幹線の線路の賃借料(九州新幹線などは、路線を別法人が保有していて、それをJRが借りるかたちになっている)に充てるそうです。年間200億円程度ですが、それを20年分先払いして利益を「かさ上げ」するとのことです。いずれにしても、ひどい話だと思います。また、株式を保有するのも政府ですから、それを売却して得られる上場益も本来国庫に帰属し、それを政府が自由に使えるようにするべきですが、こちらはなぜか長崎への新幹線の延伸に使われるとのことです。JR九州は上場に際して、本来国民に帰属するものを、とにかくもらえるものはすべてもらってしまおうということのようです。

 これは、国会議員が利権に群がっているとまでは言いませんが、十分にものを考えていないからだと思います。国民も財政全体から見たら小さな問題に関心を持っていません。しかし、国立競技場問題同様、このようなひどい話がたくさんあると私は思うのです。「目立つ」ことだけがすべてだということではないのです。