政治はもっと経済に関心を

2013.12.10発行 Vol.212
 特定秘密保護法が国会を通過しました。法律の中身にも懸念がありますが、私がそれよりももっと懸念しているのは、政治家や政権が経済のことをあまり考えなくなっているのではないかということです。

 今回の臨時国会も「成長戦略」をはじめとするアベノミクスの実行、仕上げという触れ込みで始まりましたが、結局はほとんどの時間が政治的な話題に費やされ、成長戦略もこれといったものが出ませんでした。戦略特区構想や減反政策を転換するといった評価できるものもありますが、これだけでは20数年間低迷を続けているこの国の経済を活性化することはできません。ましてや高齢化が急速な速度で進展し、円安にもかかわらず企業の海外進出が止まらない現状において、国内で基幹産業を成長させるような本格的な成長戦略は不可欠です。金融緩和と公共事業だけでは、カンフル剤として景気は短期間には浮揚しますが、その後は落ち込むだけです。

 金融緩和も心配なことがあります。給与の統計である「現金給与総額」を見ると、現状は前年同月とほぼ同じ水準が続いています。企業業績は向上していますが、一人あたりの平均給与は上がっていないのです。その中、消費者物価が前年比で0.9%程度まで上がっています。実質的な所得が減少しているのと同じです。そして、物価上昇は、円安による輸入物価の上昇が主な原因です。「コストプッシュ」型の悪いインフレが起こっているのです。

 ここでもうひとつ考えなければならないことがあります。物価上昇が、円安に起因している部分が大きいのですが、昨年の今頃から円安が始まっていることです。民主党政権が自民党政権に変わることでそれまでの円高の「呪縛」が解け、円安に進みました。昨年12月の平均ドル・円レートは83円程度でしたが、今年5月の平均レートは101円まで円安が進みました。

 何を言いたいかというと、円安による物価押し上げの要因がこの先、急に消えていくということです。つまり、輸入物価の上昇率が前年比では下降しはじめ、消費者物価も上昇率が低下する可能性があります。悪いインフレは収まりますが、下手をするとまた需要不足によるデフレ傾向が始まります。ましてや来年4月からは消費税率が3%上がるのです。

 日銀はこれを放置しないし、できないでしょう。となれば「異次元緩和第2弾」を行わざるを得ません。日銀がさらにリスクを負うということです。

 これらの問題を解決するのは、日本経済が持続的に成長することしかありません。もちろん、本格的な成長戦略はすぐには効果は出ないでしょうが、成長の確信を持てるような「本物の」成長戦略が必要なのです。消費税を3%上げて、その2%分を景気対策のために使うというような「小手先」の経済政策ではダメなのです。そのためにも、景気が浮揚している今こそ、大胆な規制緩和や、法人税の課税ベースを広げた税率下げなどの思い切った成長戦略を望みたいものですが、政治の次の関心は「集団的自衛権」や野党の再編に移ってしまっているような気がすることを懸念しています。もうすぐ始まる通常国会では経済にも集中して欲しいと思います。ましてや、政争などはどうでも良いことです。