持っている人には持っていない人の気持ちは十分には分からない

2016.03.22発行 Vol.267
 テレビやラジオで活躍していた「経営コンサルタント・経済評論家」の学歴や経歴詐称が大きな話題になっています。私は彼のラジオ番組に何度か出演したことがあり、また私も「経営コンサルタント・経済評論家」なので、少なからずその成り行きに関心を持っています。

 学歴や経歴だけで仕事ができるわけでもなく、それらを気にすることはないと言えばそれまでですが、それほど簡単に割り切れないのも事実です。とくに、テレビのコメンテーターをやるとか、一流のビジネスマンなどそれ相応の人たちと一緒に仕事をしていかなければならない立場となると、実力があっても学歴やキャリアのない人たちは結構気苦労することがあるのは紛れもない事実なのです。

 学歴の高い人は、「そんなこと気にしなくていいのでは」と思うかもしれませんが、それは持っている人の感覚です。とくに、学歴はほとんどが若いころに得られるものなので、持っている人にはそれが当たり前のように思えるでしょう。そうなると、持っていない人の気持ちがなかなか分からないのです。

 同じことが2代目、3代目の経営者にも言えます。もちろん、2代目などでも、自分で苦労して会社を大きく、強くされた方はたくさんいらっしゃいます。ある立派な経営者から「自分は2代目だが、若いころは会社も小さく、自分でリヤカーも引いて商売した。自分では1.5代目だと思っています」と言われたことがありました。しかし、このような方は別として、多くの後継経営者たちは、小さなころから家庭がある程度裕福で、周りからもちやほやされて育った人も少なくありません。このような境遇で育った人には、やはり、貧しい人や部下の気持ちはなかなか分からないものです。

 私は、そのような人たちを非難しているわけではありません。大事なことは、学歴や財産、社会的地位などを当たり前のように持っている人たちは、それらがない人の気持ちが十分には分かっていないのだということを理解していることが大切なのです。私も、両親のおかげや運が良かったこともあり比較的高い学歴を持っていますが、それらがない人がどういう気持ちでいるのかを分かっておらずそれを察することが大切だと考えています。一方、学歴や財産に恵まれない人は、それを斜めから見るのではなく、「うまくあこがれる」ことにより、持っている人に勝る実力をつけたり、場合によっては、年齢が高くなっても学校に通うということもできるはずです。実際に、当社に以前勤めていた女性は、夜間に大学に通い、ちゃんと学位を取得しました。

 松下幸之助さんは、順境であれ逆境であれ、それを素直に受け入れることが大切だとおっしゃっています。素直でなければ、順境はうぬぼれを生み、逆境は卑屈を生むこととなるからです。順境に育った人には、人の良さがありますが、うぬぼれることなく、そしてあるものをひけらかすことなく、一方、逆境に育った人には強さがありますが、卑屈にならずにいることが大切なのです。

 どんな状況でも自分や環境を素直に受け入れ、等身大で生きていきたいものですね。

【小宮 一慶】