愕然とした企業研修・・・やる気のある社員、ない社員

2020.02.12発行 Vol.360
仕事柄、多くの会社で研修や講演をさせてもらいます。その際に、研修対象の社員さんの反応の差を感じることも少なくありません。中には愕然とすることもあります。
数年前ですが、「超」がつくほどの名門企業の子会社で、1回だけの研修を頼まれた時のことです。私の研修は私が講演するといったものなど結構いろんなパターンがありますが、この時の研修は課題図書を読んで、それぞれに感想を発表していただき、その後、私がお話するというものでした。比較的小人数ではこのパターンは効果が高いと思っています。
その時の課題図書は、ファーストリテイリング創業者の柳井正さんが書かれた『経営者になるためのノート』でした。私がとても感銘を受けたということもありますが、経営者相手の他の研修でも使用して評価がすごく高かったからです。
その大企業の子会社の部長レベルの人たち10数人にもその柳井さんの本を事前に読んでいただきました。研修の最初に、それぞれから感想をもらったのですが、私はその反応に結構驚きました。
「こんな本、社員をうまくだまして働かすための本ではないですか」、「ユニクロなんてブラック企業」というような否定的な感想が続いたのです。この本を評価した人は10数人の中で、たった一人でした。
そのような感想が続いた後、私から「仕事は楽しいですか?」とポジティブな答えが出ないことは分かっていて質問をしました。ある人は「言われたことはきちんとやっています」と憮然と答えました。他の方も同じような反応でした。子会社と言っても有名な企業ですから、部長ともなると待遇は悪くはないと思いますが、とにかく前向きではないのです。「新入社員の頃にもそう思っていましたか」という問いかけには多くの人が黙ってしまいました。「お子さんにも今の話をできますか」ということだけ話して、話題を変えました。もう少し受け入れやすいテーマに変えて2時間ほどの研修を終えましたが、私の気分は、かなり暗いものでした。
一方、こちらは継続的に研修をさせてもらっている150名ほどの中小企業ですが、社員さんの多くが「会社に来るのが楽しい」、「会社に行けるので早く朝が来ないかなと思う」と本気で思っている会社もあります。もちろん、全員がそう思っているわけではありませんが、結構きつい現場仕事をしている人が多いにも関わらず多くの人が前向きです。離職率も格段に低いです。
この両社の違いはどこから来るのでしょうか。それは「働きがい」です。前者の会社では、会社に来ている人たちのモチベーションは、給与だけです。名門企業の子会社というプライドも幾分あるかもしれませんが、働きがいを感じていません。社長や役員は親会社からやってきて、言われたことだけをやる・やらせる、波風を立てないというだけになっているからです。
一方、後者の、社員さんが生き生きと働く会社では、とにかく、お客さまに喜んでもらう、働く仲間に喜んでもらう、工夫ということを長年徹底しており、人に喜んでもらっての働きがいを感じているのです。(中には人に喜んでもらうことに働きがいを感じないという人もいるかもしれませんが、それは採用の誤りだと私は思っています。)
私の人生の師匠のお坊さんは「お金を追うな、仕事を追え」ということを私に教えてくれました。そのほうが働きがいが高まりますし、結果的に儲かります。後者の会社のパフォーマンスがとてもいいことは言うまでもありません。

【小宮 一慶】
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