市場介入で円高阻止を

2010.08.10発行 Vol.132
 1米ドルが85円程度の円高が続いています。欧州での金融不安がくすぶり、米国の景気も先週末発表の雇用統計からも分かるように踊り場の状況です。
そうした中、円高が進んでいますが、回復半ばにある日本経済にも悪い影響が出そうです。企業、特に現在の景気回復を支えている輸出産業も、業績は回復しながらも、先行き不安から雇用の拡大には慎重で、雇用環境は悪いままです。
 
  私は次の3点から、政府が為替介入によって円高を食い止めることは、日本経済にプラスをもたらすと考えます。このままの円高水準が続くのなら、ここは断固として介入をしてもらいたいと思っています。
  まず、第1点目は、言うまでもなく輸出産業の業績アップです。ひとつは、円高緩和により輸出がやりやすくなることで、これにより売上高が伸びます。もう一つのメリットは、外貨の価値が上がることにより、円換算した利益額がそのまま利益の上振れとなることです。もちろん、輸入企業や輸入物価の上昇をもたらすというデメリットはありますが、現状では輸出産業に視点をおいたほうが良いでしょう。
  第2点目のメリットはデフレ対策です。昨年秋頃までは、米国、ユーロ圏、中国などほとんどの主要国でデフレ状態でしたが、日本を除く国々では、現在は消費者物価は前年比でプラスの状態となっており、デフレは日本だけです。ドル買い・円売りの為替介入を「非不胎化」(=市場介入で市中に増える円資金を日銀が吸収しないでそのまま市中に残すこと)で行うことにより、市中での資金量を増やすことでデフレ対策を行うのです。長期金利が上昇する「インフレターゲット」を導入することは、現状の景気や日本の財政赤字を考えた場合には大きな誤りで、やるべきではないと私は考えますが、非不胎化介入はデフレ対策に有効です。
  第3番目のメリットは、日本の外貨準備に関してです。現在わが国は1兆ドルを超える外貨準備を保有しています。埋蔵金議論でご存じの方も少なくないと思いますが、政府が当てにしている埋蔵金のかなりの部分は、この外貨準備に関係する外為特別勘定の剰余金だとしています。日本の外貨準備は、これまでの円高時にドル買い・円売りの為替介入で得たものです。前回の2004年前後の介入では、約35兆円程度の介入を行いましたが、介入ポイントが105円前後でしたから、現状の為替レートを考えれば、埋蔵金どころか実は多額の含み損を抱えているはずです。(このあたりのことは『日経新聞の「本当の読み方」が分かる本』に詳しく書きました。)ここで、1米ドル=85円前後で介入を行えば、持ち値を下げることができ、将来円安傾向に振れれば、含み損も大幅に消せることとなります。

 以上3点のメリットを考えても、10兆円規模の為替介入を是非行って欲しいと思いますが、政権は安定せず、景気や経済のことなどまったく気にする様子ではないことが最大の懸念ですね。