安倍首相リーダーシップ論

2020.09.08発行 Vol.374
安部首相が辞任を発表しました。先週火曜日の朝日新聞朝刊のオピニオン欄に安倍首相のリーダーシップについて、企業経営者と比較しての意見を載せてもらったところ、かなりの方から反応をいただきましたので、今回のメルマガはそのテーマにしたいと思います。
安倍首相は2012年12月の総選挙で、自民党が旧民主党を破って以降、7年8カ月にわたる長期政権を維持してきましたが、そのリーダーシップということについて評価すると、「短期的な問題解決能力や突破力はあるが、長期的なことを犠牲にしている」、「公私混同、忖度に弱い」というのが、私の意見です。
まず、最初のポイントです。アベノミクス、とくに「異次元緩和」で低迷していた株価を2倍まで引き上げたり、求人を増やすという点では、問題をある程度解決したことは間違いがありません。在任期間中に5度の国政選挙があったのですが、それもことごとく成功させました。安倍首相の短期的にものごとを解決したり突破する能力は高いと言えます。
しかし、長期的な視点が欠けています。異次元緩和のせいで、日銀が、安倍政権前には100兆円程度だった国債保有が急激に増加し、国債や株式といった価格変動リスクのある金融商品を600兆円程度も保有することとなり、中央銀行である日銀が大きなリスクを背負い込むこととなりました。金利上昇などがあると、日銀は大きな含み損を抱え込むこととなります。また、そのこととも大きく関係しますが、対名目GDP比で先進国中最悪の財政赤字も増大の一方です。
これらは、すべて、将来への付け回しです。私たちの子供や孫たちの負担やリスクです。ですから、短期的にある程度の結果を出したものの、長期的にはリスクがとても増大したという認識が必要です。アベノミクスの「3本の矢」のひとつだった成長戦略が必要だったのですが、全くというほど実現しなかったことも原因です。
短期的なことには能力の高い首相が長期的な政権を担ってしまったというツケが、今後、国民に回ってくる時が恐ろしいと言えます。長期的な視点がないので、後継者も育っていません。安倍首相の後は、菅官房長官が継ぐようですが、そうなると、これまでのスタンスが変わらず、長期的なリスクがそのまま、あるいは増大することも懸念材料です。
もう一つのポイントは「公私混同」です。森友、加計、桜を見る会などの問題は、首相やその家族の公私混同が露呈した問題でした。それに取り巻きの忖度まで加わったことは、首相のリーダーシップに大きな疑念を抱かせたところです。長期政権で権力が集中した弊害です。
経営コンサルタントとして、経営者には「公私混同は会社をダメにする」ということを口を酸っぱくして言っている身としては、とても残念な話です。権力が集中し、そして、それが長期化すればするほど、知らず知らずのうちに、自分も周りもマヒしてくるのが人間の常です。「部下が同じことをやっても許せるか」ということを公私混同かどうかの基準としてくださいといつもお話しています。
なかなか難しいことだとは思いますが、短期的のみならず、長期的にも組織が良くなる問題解決をしながら、なおかつ公私混同をしないというのが、求められるリーダー像ではないでしょうか。
【小宮 一慶】
メールマガジン申込メールマガジン変更・停止