失敗を糧にする

2016.01.12発行 Vol.262
 明けましておめでとうございます。

 2016年は年明け早々相場が大きく下落し、波乱の幕開けとなりました。中国経済の成長鈍化や昨年暮れの米国の利上げという、これまでの世界経済の状況からの大きな転換点を迎えている上に、サウジアラビアとイランの対立激化が表面化し、年初から相場が荒れたと私は分析しています。いずれにしても、世界は経済だけでなく、政治も不安定な状態が続いており、今年もその状況が続くと考えられます。

 ところで、年明けに恒例の箱根駅伝を見ていて思ったことがあったので今回のメルマガはそのことを書きます。駅伝をご覧になった方も多いと思いますが、青山学院大学の完全優勝だけでなく、今年も多くのドラマがありました。私が一番印象に残ったのは、9区でタスキをつなごうとしたときに、神奈川大学の8区の走者が、あとわずかなところで、9区の走者にタスキを渡せなかったことです。

 繰り上げスタートという制度があり、トップの選手から20分以上遅れた場合には、交通規制を解除する等の理由により、遅れた学校は一斉に繰り上げてスタートするシステムになっています。神奈川大学の8区の走者は、わずか4秒、規定に遅れたためにタスキを次の走者につなげることができなかったのです。

 そのときの走者の表情は、もちろんのことながら大変悔しそうでした。ここまでつないできたタスキを次の走者に渡せなかったのですから、その気持ちは察して余りあるものがあります。その走者は、一生その悔しさを忘れないに違いありません。しかし、私は、その彼は、二度とそのような「失敗」をしないのではないかと思いました。彼には厳しいですが、あえて「失敗」という言葉を使わせてもらいます。彼は、あと、わずかな頑張りがあれば成し遂げられたかもしれないという気持ちをこれから一生持ち続けることでしょう。私もわずかな違いで失敗したことがあります。しかし、今となれば、そのことが、その後ものごとを行う際に、慎重に、そして一歩踏み込ませたと思います。逆に、若い頃に運が良くて、実力以上の成功や評価を得た人は要注意です。そういう人は、世の中や仕事を甘く見がちだからです。こうして考えると、悔しい思いをするということは、その時はとてもつらいことでしょうが、長い人生で考えると、かえって良いことであるかもしれません。そのためには、失敗したことを糧とするという心構えが大切です。松下幸之助さんも「転んでもただ起きない、そこから何かを学ぶことがとても大切だ」とおっしゃっています。それは意地汚いことではなく、そうでなければ人は進歩しないからです。そのためには、常に反省し、素直で謙虚であることが大切ですね。

 駅伝を見ながらふとそう思いました。今年もよろしくお願いいたします。

【小宮 一慶】