国債格下げを『疎い』で済ませてはいけない

2011.02.08発行 Vol.144
 日本国債の格付けが「AA」から「AAマイナス」へと格下げになりました。今のところすぐにデフォルト(債務不履行)や急激な金利上昇は起こらないと考えられますが、今回の格下げは、これまでの格下げと少し違うと私は考えています。

   これまでもバブル崩壊後の金融危機時などには日本国債の格下げは行われました。しかし、これらは金融危機などで「急性的」な日本の金融や経済のリスク上昇による場合が多かったのです。しかし、今回は金融危機ではありません。景気はあまり良くはありませんが、それでも景気回復過程にある中での格下げです。格下げの最大の理由は財政赤字といういわば「慢性病」によるものです。

   格付け会社は当面は「安定的」として、近いうちのさらなる格下げはなさそうですが、このままでは、再度の格下げも避けられないと私は考えています。このままでは「慢性病」である財政赤字はますます増加する一方だからです。

 日本の財政状況が悪いことは皆さんもご存じだと思います。ギリシャが危機を迎えた時の財政赤字残高は名目GDPの110%程度でした。日本はもうすぐ200%に達する勢いです。そして、この先も財政赤字が改善する見通しは全く立っていません。今年度予算でも44兆円の赤字国債の発行が見込まれています。そして、利払いは10兆円にも達しています。国債費をのぞいた予算を「プライマリーバランス」と言います。これは、企業の損益計算書では「営業利益」にあたります。菅内閣はこれを2020年度予算で均衡させるとしています。つまりそれまで債務残高は増え続けるということです。主要国中対名目GDP比最悪の財政赤字残高が増え続けるのです。私には怖いもの見たさに財政赤字を増やしているとしか思えません。そして、万一プライマリーバランスが均衡しても、先ほども述べたようにそれでも10兆円の利払いがあるために、毎年「経常利益」ベースでは10兆円の赤字です。まだ、財政赤字は増え続けるのです。

 小泉内閣時に2011年度予算(今国会で審議している予算です)でプライマリーバランスを均衡させるとしていたのは、もう遠い昔に反故にされています。政権が変わったから守る必要もないかもしれません。しかし、このところ財政赤字はどんどん増え続けています。そして、高齢化の進展もあり、このままではさらに財政が悪化することは目に見えており、2020年度のプライマリーバランスの均衡もおぼつきません。おぼつかないというより、先送りして均衡させるつもりなどないのです。なにせ、前職が国債発行の責任者である財務大臣だった首相が格下げに「疎い」のだから、十分に議論してなどいないのは明らかです。

 しかし、だからと言って、私は即座の消費税上げに賛成しているのではありません。財政再建の第一歩は財政削減です。ムダを省き、さらに公務員の給与を下げることから始めなければなりません。現状、国と地方合わせて約300万人いる公務員に支払われている約30兆円の人件費の削減から始めるべきです。もちろん、警察や防衛など特殊な仕事をしている人たちには配慮しなければなりませんが、一般企業と同じような事務処理をしているだけの公務員の給料は中小企業並みに落とすべきです。税金で賄っている彼らの年金が一般の国民より高い理由を教えて欲しいものです。

 民主党は公務員の給与の2割削減を公約していたと思いますが、自治労が大きな支持母体のため、この約束も反故にしたままです。財政削減と消費税上げで早急に財政を改善しなければ、子どもたちに大きなツケを残すのみならず、財政や金融危機をももたらす可能性があると私は危惧しています。菅内閣退陣や民主党政権崩壊は近いのではないでしょうか。しばらくは混乱が続きそうです。(詳しくは昨年出版した『日本経済このままでは預金封鎖になってしまう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をお読みください。)