君はきっと出世するよ

2012.04.24発行 Vol.173
 日曜日の早朝に乗った中央線の車内でのことです。新宿駅を6時半過ぎに出た電車だったのですが、手前の駅で線路に人が立ち入ったとのことで少し遅れていたため、休日の早朝にも関わらず、少し混雑していました。私も、その先の東京駅で新幹線に比較的時間の余裕のない乗り継ぎがあったため、少しいらいらしながら電車に乗って窓際に立っていました。四ツ谷駅を過ぎたころでしたが、私から少し離れたところに座っていた30歳くらいの男性が、四ツ谷駅から乗ってこられたお年寄りにさっと席を譲ったのです。

 そして、気持ちよく席を立った彼は、今まで読んでいた本を立ちながらも読み続けていたのですが、見ると、英語の教本でした。ヘッドセットをつけていたので、おそらくテキストを見ながら英語を聞いて勉強していたのです。

 日曜日の朝早くから、スーツにネクタイ姿でしたが、どんな職業についているのかは分かりません。スーツにバッジがついていたのでバッジを見ようとしましたが、少し離れていたので残念ながら見えませんでした。彼のような若手社員を雇っている会社は本当に幸せだなと思いました。電車の遅れで少しイライラしていた私の気持ちも一瞬で和みました。きっと周りの人もそうだったと思います。

 いくつかの点で、彼は優れており、きっと出世するなと思いました。

 まず、言うまでもなく、お年寄りにさっと席を譲ったことです。朝早くなら、眠いので席に座ったら眠っている人も少なくありません。彼は、体力も気力も充実していたのでしょう。お年寄りが近くに立っていても、優先席に平気で座っている人が少なくない時代です。優先席付近では電話の電源を切って欲しいと表示があるにもかかわらず、平気でメールしている無神経な人も多くいます。そんな中でも、もちろん、困っている人に優しい行動をとる人もいるのですが、その数がどんどん減ってきているような気がします。人々に余裕がなくなっているからでしょうか。そんな中で利他の気持ちを若いころから身につけている彼は、それだけで成功の資質を備えています。

 もうひとつ彼が素晴らしいのは、勉強していることです。今、彼がどういう仕事に就いていて、将来、何になりたいのかは私にはもちろん分かりません。しかし、「紙一重の積み重ね」でコツコツ勉強しているのは素晴らしいことです。とくに語学は一朝一夕では身に付きません。いざというときに外国語が話せるようになるには、普段からの勉強が必要です。彼はきっとどこかで英語が必要になったときに、今の勉強が役に立つことでしょう。私は常々「チャンス」の対の言葉は「準備」だと思っています。チャンスは皆に平等に訪れますが、それを活かせるのは普段からの準備しかないのです。ちょっとした理屈なら事前の勉強でも間に合うかもしれませんが、語学だけはそうもいきません。長く習得に時間がかかることを普段から勉強していることは大切です。

 そして、もうひとつ彼が出世すると思ったのは早起きなことです。スーツにネクタイ姿だったので、通勤途中だったのかもしれませんが、いずれにしても早い時間からフル回転していることに違いはありません。勤勉の習慣はなにものにも代えがたいものです。松下幸之助さんの本に「勤勉は、喜びを生み、信頼を生み、そして富を生む」とありますが、若いうちに必ず身につけなければならない習慣は一生懸命働くということです。適当に働いて成功する人はまずいません。早起きはその大前提です。

 日曜日の朝に、彼のような人を見ることができて、私は本当に気分が良くなりました。彼のような若者が、この閉塞感の強い日本に増えてくれることを心から願っていますし、私もそういう人をできるだけたくさん育てたいと思っています。