台湾で思ったこと

2012.03.27発行 Vol.171
 先日、社員旅行に2泊3日で台湾へ行ってきました。当社としては初めての海外での社員旅行でした。天候も良く、食べ物も満足でき、おかげさまでとても楽しい時間を皆で過ごせました。

 ご存じのように、台湾は昨年の東日本大震災に際して、多額の援助を日本にしてくれました。そのことをもう一度感謝するべきだという意見が、震災から1年後の日本の新聞のコラムにもありました。台湾の方たちは、台湾での大地震の際の日本からの援助に対する恩返しだという気持ちが強かったのですが、日本と台湾はとても良い関係にあり、多くの旅行者も往き来しています。

 私は3度目の台湾訪問だったのですが、台湾の置かれている現状を考えると、いろいろなことを考えざるをえませんでした。日本で台湾国旗(正確には中華民国の国旗:青天白日満地紅旗)を見かけることはありません。日本どころか、世界中で、台湾以外で台湾の国旗を見ることはできません。世界で台湾を国として承認しているところはどこもないからです。台湾の人たちはそのことをとても残念に悲しく思っているのです。台湾で聞いた話ですが、2004年のアテネオリンピックで、台湾の選手がテコンドーで金メダルを獲得しました。その際に、表彰式では国旗ではなく、チャイニーズタイペイのオリンピック委員会の旗が掲揚されたそうです。多くの台湾の人たちは悔し涙を流したと言います。

 台湾が独立国として承認されていないのは、もちろん世界各国が中国(中華人民共和国)を「唯一の中国」として承認しているからです。日本も米国もそうです。中国は、台湾を自国領土の一部というふうに主張しています。

 中国が経済力を伸ばし、GDPでは日本を抜いて世界第2位の経済大国になりました。アフリカなど多くの国々に援助を行うまでになっています。軍事的にも空母を建造するなどそのプレゼンスをますます増しています。そのことが、世界の国々での中国の立場を高め、逆に台湾の位置づけを小さなものとしています。そうした中で、台湾は、微妙な立場で「独立」を維持しているのです。

 私が危惧しているのは、台湾の独立だけではありません。中国の経済的・軍事的なプレゼンスの増大は、日本にとってもこの先非常に大きな脅威となる可能性があるということです。日本の名目GDPは91年とほぼ同じ470兆円程度で停滞しています。この先も、高齢化の益々の進展や財政赤字の増大、産業の空洞化を考えれば、この「失われた20年」が「失われた40年」となりかねません。そうなれば、益々中国の日本に対する相対的な立場は強くなります。現状でも、日本からみて中国は最大の貿易相手国であるものの、中国にとって日本は4番目の貿易相手地域(EU、米国、アセンアンの順)に過ぎません。

 日本の地位が低下すれば、尖閣諸島だけの問題でなく、日本の存立そのものにも悪影響が出ることも懸念されます。そうした意味で、わが国のシステムをより効率的なものに変え、産業政策を見直し、選択と集中を行うなどして、経済力や防衛力を高めることが急務です。しかし、現状の民主党政権では、自分たちの生き残りに必死で、なおかつそれすらもおぼつかない中、全く期待が持てないのはとても残念なことです。台湾の人たちの憂鬱と同じような憂鬱を、将来の日本人が持たないことを心より祈るばかりです。