原油高騰に脆弱な日本経済

2020.01.14発行 Vol.358
2020年に入り米国とイランの関係が一気に緊張しました。ドバイ原油がそれに反応するように1バレル70ドル程度まで大きく値上がりし、中東原油への依存度が高く、原油価格上昇に弱い日本経済への懸念から日経平均株価が大幅下落したというのが2020年のはじまりでした。今は、ある程度落ち着いていますが、原油価格の高騰に日本経済が脆弱だということをいみじくも露呈したことになりました。
米中摩擦が今年最大の日本経済への懸念と考えていた人も多い中で、米中摩擦は緩和の方向に向かいつつあり、少し安心感がありますが、今後の日本経済を見る上では、中東情勢にも目配せが必要になりました。
年初に株価が大きく反応したのには訳があります。日本経済は原油高に弱いからです。直接的な理由としては、輸入物価が上昇するからです。原油価格が上がるということは、同時にLNGの価格も上昇します。原油やLNGの輸入に占める割合の多い日本の場合、それが輸入物価に与える影響は大きいのです。そして輸入物価の上昇は企業物価の上昇を通じて消費者物価に影響を及ぼすのです。このことが、現状の日本経済にはかなりまずいのです。
この場合、とても重要なことは、物価上昇が「ディマンドプル」型ではなく、「コストプッシュ」型だということです。ディマンドプル型の物価上昇は、需要(ディマンド)が増えることで物価が上昇する、いわば、「健全な」物価上昇です。この場合には、企業業績も上がりやすく、働く人の給与の上昇も望めます。
しかし、原油価格上昇のような、コストプッシュ型の物価上昇の場合には、値上がり分のほとんどが海外に流出するため、単に物価だけが上昇するということになります。
そうなれば、給与が上がらない中でモノの値段が上がるわけですから、消費が下がり、景気全体が下がり気味になるということです。一人当たりの所得を表す「現金給与総額」は2014年度から上昇していますが、そのレベルは年1%以下と低く、2019年に入ってからは、前年比マイナスの月も少なくありません。所定外労働時間(残業等)が「働き方改革」の影響もあって減っていることが大きいと考えられます。
一方、米国では、原油価格の上昇は、ガソリン価格の上昇などで物価には悪影響となります。ところが、昨年、米国は原油の純輸出国となりましたから、貿易収支の改善を通じて、米国経済には好影響となります。原油のほぼ全量を輸入している日本とは根本的に構造が違うのです。
原油価格の上昇に日本経済が脆弱ということを説明してきましたが、今後の焦点は、米国とイランの対立により、どこまで原油価格が上がるのか、そしてそれがどれくらい続き、日本の物価に影響を及ぼすのかです。今は小康状態というところでしょう。
米中摩擦緩和で年後半には景気の持ち直しを私は期待していますが、原油価格が今後高騰すれば、日本経済には大きな下押し圧力となります。大統領選を控えたトランプ大統領の動き、それに大きく関連する中東情勢や原油価格の動きからは目が離せない一年になりそうです。
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