円高、景気後退に日銀は対応できるか

2019.06.25発行 Vol.345
このところ107円台前半まで円高が進みました。これは、米国の中央銀行であるFRBが金利下げをにおわせているからです。年内に政策金利(フェッドファンド金利オーバーナイト、一日だけ銀行間で貸し借りする金利)について、0.25%の利下げを2から3回行い、場合によっては1%台まで短期金利が低下する可能性があります。そうなれば、日米金利差が縮まりますから、その思惑で円が買われているという状況です。

金利下げは米国景気には好影響なので、このところニューヨークダウは高値を追っていますが、一方、日本企業にとっては、輸出が難しくなることと、企業などが海外で稼いだ外貨(USドル)の円貨での換算額が目減りしますから、日経平均株価のほうは微妙な動きをしています。また、円高は総じて日本経済にはマイナスと考えられるので、今後の景気指標の動きにも注意が必要です。
そうした中、注意して見ていかなければならないのは、日銀の動きです。円高や景気後退に対しては当然のことながら対応策を取らなければなりませんが、手詰まり感がとても強いのです。

日銀がやれることのひとつは、マイナス金利の「深掘り」です。現状、金融機関が日銀に預ける日銀当座預金の一部にはマイナス0.1%の金利が課されています。また、短期金利も10年国債利回りもマイナスの状態が続いています。今後、円高対策や景気刺激のために、もし、マイナス金利を「深掘り」、つまりさらにマイナス幅を広げるということも理論的には可能ですが、もし、それを行うとすれば、それでなくとも収益状況が厳しくなっている銀行、とくに地方銀行などの経営に大きな影響が出かねません。

現状、銀行の貸出金利(国内銀行貸出約定平均金利)は、0.9%を切る状況でこれでは、預金などの調達金利がほぼゼロだとしても、人件費を賄うのもなかなか厳しい状況です。さらに金利が低下するとなると、収益はさらに落ち込みます。そう考えるとマイナス金利の深掘りはなかなか難しいことです。
一方、日銀は民間銀行などが持つ国債を買い取って資金を供給してきましたが、それもほぼ限界に近づいています。日銀は現状470兆円程度の国債を保有しています。「異次元緩和」以前は100兆円程度でしたから、大量の国債を買い上げてきましたが、国債市場が機能しないくらいまでなっています。金利変動に伴う日銀のリスクを考えても限界です。
そうなると日銀に残された政策は限られます。日本株をETFで買うという選択肢もありますが、これも中央銀行のリスクを考えればこれまで以上に行うには異論も多いでしょう。

7月1日には企業の景況感を表す日銀短観も発表となり、10月1日には消費税増税が控えています。景気後退の可能性も小さくありませんが、今後の日銀の政策に注意が必要です。

【小宮 一慶】