全力を出すとすがすがしい気分になれる

2016.04.12発行 Vol.268
 水泳のリオデジャネイロオリンピック選考会を兼ねた競技会が行われ、北島康介選手は残念ながら代表には選ばれませんでした。100m、200mともにわずかな差でしたが、伸び盛りの若い選手には勝てませんでした。勝負の世界ですから、勝ち負け、明暗がはっきりしたのは仕方ないことだとも言えます。

 レース後の記者会見で、北島選手は「晴れ晴れしい」気分と言っていましたが、全力を出し切ったからそう言えたのだと思います。以前オリンピックでメダルを獲得した時にも「超気持ちいい」と言っていたのが印象的でしたが、その際も努力を重ねた上で全力を出し切り、メダルを獲得したということもあったでしょう。

 私は、「なれる最高の自分になる」ということをよく講演でお話したり、本に書いたりします。「自己実現」とは「なりたい自分になる」ことだと思いますが、なりたい自分になる大前提は「なれる最高の自分」を目指すことだと私は考えています。そのためには、常に全力を出し切る習慣を持っていることが大切です。

 人間には、残念ながら歴然と能力差があります。持って生まれた才能と言っていいでしょう。100mを9秒7で走る人もいれば、ノーベル賞を獲得する人もいます。世界的な芸術家もいます。努力ももちろんありますが、持って生まれた才能が大きく影響していることは間違いありません。人間、なれないものはなれないのです。しかし、才能の差はあるものの、だれでも「なれる最高の自分」にはなれます。そのためには、目の前のことに全力を尽くすということがとても大切なのです。たぐいまれな才能を発揮して開花した人たちも、全力を尽くしてきたことは間違いありません。ただ、残念ながら、なれる最高の自分を目指していない人が少なからずいることも事実です。現状で満足しているのです。

 トップアスリートのみならず、学術や芸術、そしてビジネスの世界も甘い世界ではありません。優秀な人たちがたくさんいます。その中で名を残したり、人から評価されるには、才能があるにしても、全力でそれを伸ばし、開花させる努力が必要なのです。逆に、普段から目の前のことに全力を尽くすことをしていないと、才能があってもそのうちにそれを開花させる場が与えられなくなってくるものです。

 松下幸之助さんは、「全力で働いた日には自分で自分を誉めてやりたくなる、いたわりたくなるような気持になる」とおっしゃっていますが、全力を尽くした後というのは、先ほどの北島選手の「晴れ晴れしい」ではないですが、そういう気持ちになるのではないでしょうか。

 4月を迎え、新入社員さんたちの前でお話する機会がありますが、その時には必ず「若いうちに全力で仕事をする習慣を身につけてください」とお話します。若いころから全力を出す習慣を持たないと、歳がいってから必死になれるということはまずないでしょう。元々才能があったのに、長らく全力を出さないと、社内でも疎んじられる評論家で終わってしまうかもしれません。才能ももちろん大切ですが、全力を出すことがもっと大切だと思います。お互い身体に気をつけなければなりませんが、全力を出しながら毎日を過ごしたいですね。


【小宮 一慶】