低コスト温泉旅館の工夫

2010.05.11発行 Vol.126
 前回のメルマガでは、和倉温泉の加賀屋さんのサービスの良さの話を書きましたが、今回は、その好対照にある低コストでのオペレーションを実現し、お客さまに喜んでもらっている旅館のお話を紹介したいと思います。

 先日、ある企業の研修で栃木県の鬼怒川温泉のホテルに泊まりました。鬼怒川温泉もバブル崩壊後の長期的な景気低迷に加えて今回の世界同時不況で観光客が減り、中には破綻してしまってそのまま廃墟のようになっている旅館もありました。そうした中、私たちが泊った旅館は徹底した低コストの業務を行なうことにより、大変繁盛していました。宿泊代は一泊二食付きで7千円前後ととてもお手頃です。私たちが泊まった日も、高齢者を中心にほぼ満室でした。この旅館は、倒産したホテルなどを買い取って、チェーン展開しているそうです。

 私は経営コンサルタントという仕事がら、どうやって低コストを実現しているのかということに大変興味がありましたが、人を効率的に使って人件費を極力抑えています。まず、受付で驚いたのが、ひとりの女性の他に、ガードマンさんが鍵の受け渡しをしていたことです。ひとり何役もこなしているのです。夕食場所でも工夫が見られます。すべての食べ物がすでに食卓に載せてあり、配膳の必要がないのです。鍋も具が先に鍋の中にセットされていて、そのまま火を点ければ良いだけです。最後にご飯が出るのですが、これは後で持ち込まれますが、お茶碗にふたをしてあり、少々時間がたっても冷めない工夫がしてあります。これなら、ひとりの担当者で、団体客の数部屋を同時に担当することができます。夕食時間も、団体の時間が重ならないように、各団体の時間を30分ずつずらすことなどにより、人員ができるだけ重ならないように工夫しています。

 朝食会場はもちろんバイキングで、広い朝食会場を5、6人の人で賄えるように工夫がしてあります。浴場の施設や温泉なども良く、この値段なら十分に満足できると思いました。

 また、都心からでもひとり五百円で、系列バス会社により送迎してくれるということも、この旅館チェーンの魅力です。旅館によってはゲートボール場などを併設しているところもあるらしく、高齢者の団体にかなりの人気があるとのことです。バスは、帰りには系列のお土産屋さんに寄ることになっているそうです。高齢者の方は、ご近所に配るお土産を買いたいというニーズが強いとのことです。そこで客単価を上げて、収益性を高めているとのことでした。旅館業界全体が厳しい中でも、前回ご紹介した加賀屋さんなども含めて、工夫や努力次第でビジネスチャンスはまだまだあるものですね。