仕組みだけでは本当のサービスは提供できない

2011.07.26発行 Vol.155
 顧問先さんの早朝の会議に出るために、月に一度は尾張一宮駅前のビジネスホ テルに泊まります。実は今朝もそのホテルに泊まっていました。ホテル代は6千 円ちょっとでリーズナブルなのですが、対応の良さでいつもすごく満足していま す。もう、10年くらい毎月泊まっているので、ホテルの受付の人が私を認識し ているのは当然と言えば当然なのですが、チェックインは名前を書くだけで済む ようにしてくれます。また、部屋もいつも同じ部屋を用意してくれています。

 チェックイン時に、毎回、朝に日経新聞を部屋に入れてくれるように頼んでい るのですが、あるときに頼み忘れたことがありました。そのときにも、朝、部屋 に日経新聞を入れてくれました。チェックアウト時にお礼を言うと、「入れるの がいつもより少し遅れて申し訳ありませんでした」とこちらの非をとがめること なく、温かい対応をしてくれました。そのホテルの部屋はそれほど広くはありま せんが、そこに泊まると何となく安心感があり、いつも満足して旅立つことがで きます。

 一方、大阪でかつて「日本一」と評判をとったホテルに、セミナーを行ってい る関係上、年に何度か泊まることがあります。大分長い前からそのホテルでセミ ナーを行っていますので、おそらくこれまで50泊以上は泊まったと思います。 セミナーも大小合わせて100回程度は開催しました。

 そのホテルは「究極のホスピタリティー」などと評判をとっており、本にもよ く紹介されているホテルです。もちろん、先ほどの尾張一宮のビジネスホテルと 比べて宿泊料金は数倍違いますから、部屋が良いのは当然ですが、サービスは、 どちらかというと尾張一宮のホテルのほうが良いと感じることが少なくありませ ん。

 たとえば、よく泊まるお客さまにはチェックイン時に「お帰りなさいませ」と 言ってくれます。そして、私を本当に覚えているスタッフの場合には、顔を見た 瞬間に「小宮さま、お帰りなさいませ」と言ってくれることもなくはないのです が、大抵は、こちらが「小宮です」と名乗ると、パソコンをたたき始め、画面を 少しスクロールさせて、画面をのぞき見ながら、少し間が空いて「えーっ、お帰 りなさいませ」と言われます。マニュアルでそのようになっているのでしょうが、 それなら、言われないほうがましではないかと思うこともしばしばあります。

 いろいろと考え込んだマニュアルやシステムを使って、ホスピタリティーを 「演出」していることは分かりますが、それでは本当のサービスは提供できない のではないかと思います。

 このホテルでは、部屋に関して同じクレームを3回続けて言ったこともあり、 マニュアル通りが裏目に出ることもあるのです。逆に言えば、一見客を満足させ ることはそれほど難しくなくとも、常連客を常に満足させ続けることは難しいと も言えます。

 システムやマニュアルも大切ですが、やはり、ひとりひとりがお客さまを大切 に思う気持ちと、それに応じた技量が必要だとつくづく思います。(これらのこ とをまとめた『神様のサービス』という本が今週28日に幻冬舎新書から発売に なります。よろしければご参考にしてください。)