今月末の日銀の政策決定会合での判断はとても難しい

2019.07.23発行 Vol.347
来週、7月29日、30日に、日銀の政策決定会合が開催されます。そして、今回の判断はこれまでにないほどとても難しいものとなると予想されます。
その理由は、7月30日、31日に、米国の中央銀行であるFRBが日銀の政策決定会合にあたるFOMC(連邦公開市場委員会)を開催し、そこで「利下げ」が決定される可能性が高いからです。現状2.25%から2.50%の間で誘導されている米国の「政策金利」を0.25%引き下げることが予想されています。

一方、現在はマイナス金利で、打つ手が非常に限られている日銀は、米国が利下げを行えば、さらに厳しい状況に陥る可能性があります。また、日銀の政策決定会合が、米国のFOMCよりも一日先に行われることも、米国の政策の見極めができないわけですから、これも日銀にはとても大変なわけです。
日銀が取れる政策はとても限られたものです。米国は、金利を下げる余地が少ないといってもまだ2%以上ありますが、日本は、マイナス金利を続けており、これ以上の金利の「深掘り」は大変です。マイナス金利を深堀りすると、それでなくとも厳しい銀行の収益がさらに悪化する懸念があるからです。

国債金利も、銀行が日銀に預ける「日銀当座預金」の一部も金利はマイナスです。貸出先があまりなく、預金ばかりが増える傾向の強い地方銀行や信用金庫などは、なかなか稼ぐことはできません。それどころか、運用がマイナスになる可能性も大きいのです。そうした状況の中、銀行にとってベストなのは、優良な貸出先に貸出しを行うことですが、なかなか良い貸出先を開拓するのも難しく、また、見つかったとしても貸出金利の平均が0.9%を切る状況では、思うような金利が取れないのが現状です。
こうした中で、米国の金利が下がる可能性が高いのです。今は、日米金利差が縮まるとの思惑から、米ドルが売られ円が買われ、1ドル=107円程度の、少し円高に振れています。また、米中摩擦の今後やトランプ政権の通貨安政策への批判が高まれば、円高に振れやすくなります。しかし、円高は、日本経済には悪影響が及ぶ懸念があります。日銀としても、円高があまり進むことを好ましいとは思っていないはずですが、もし、FRBが金利を下げれば、日米金利差を保つために、円金利のマイナスを深掘りする必要に迫られるのですが、銀行のことを考えれば、それもなかなか難しいのです。

こういった状況ですから、金利が単純に下がり、景気刺激になると思う米国では株が買われ、ニューヨークダウは27000ドルを超え史上最高値を更新していますが、一方の東京市場では、日経平均株価もいまひとつさえない状況です。
先にも述べたように、日銀が一日早く政策決定会合を開くため、FRBより先に決断を迫られるわけです。米国の利下げを見届けて政策決定を行っても難しい決断を迫られますが、それすらかなわず、米国より一日前に決断するということが日銀の憂鬱を深めています。しかし、米国の利下げの確率が高い以上、なんらかの手を打たなければならないのです。そうした中、私は、日銀が、現在、ETFなどを通じて株式などを年6兆円購入している日本株の購入額を増やす可能性があるのではないかと考えています。しかし、これとて、中央銀行である日銀が、価格変動の大きいリスク資産を保有することへの批判も大きく、容易な決断ではありません。
いずれにしても、29日、30日の日銀の政策決定会合での結論からは目が離せません。

【小宮 一慶】
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